第12話 ダンジョン再び
男は目隠しをされると、馬車の中に乱暴に放り込まれた。
「痛いっ!」
意識を取り戻した老人は、そんな男を睨めつけながら馬車へ入っていった。
「俺は何も知らないんです・・・」
涙を流す男。目隠しが涙で濡れる。
「バルドオ総督、なぜこのような真似を・・・」
老人は黙ったまま何も言わない。
「うう・・・なんでこんな目に。」
「総督、この男はいったい何者ですか。」
「・・・敵は大勢いる。そいつに聞くのが手っ取り早いはずだ。」
「ん~?この男、何者なのかな~?」
いつのまにか、着ぐるみも馬車に乗り込んでいたようだ。
「総督が倒されてたってことは、魔法が使えるのかなって思ったんだけど~、勇者の血はひいてないっぽいし、なんなんだろうね~?」
勇者の作り出した結界。その中で魔法を使えるのは勇者とその血を受け継ぐ人間だけだ。
「俺はほんとに巻き込まれただけで・・・」
「話はあっちで聞くかな~。」
馬車は王都の門を通り抜け、王都より内陸部にあるライテーネ牢獄まで向かっていた。
「おっ、連絡が来たよ~。」
紙ヒコーキが牢獄がある方角から飛んできた。器用に馬車の中に入り込むと、着ぐるみ男が捕まえた。
「ふんふん、なるほどね~。この男、僕が預かっちゃうから~。」
「はっ。」
「うんうん。君はなかなか物分かりがよさそうだね~。団長に推薦状書いとくよ~。じゃあまたね~。」
「ちょっ、まだ走行中なんですけど!おいっ、ふざけるなっ、離せっ!」
男は着ぐるみ男に抱え込まれ、馬車から放り投げられた。
「ひぃっ!なんでこんな目に!」
着ぐるみ男は馬車から飛び降り、そのまま高く飛び跳ねた。
「キャッチ~。」
馬車はあっという間に見えなくなっていった。
「さて~、君には王都の方でじっくりとお話を聞かせてもらうかな~。」
「そうはいかないよー。」
「返してもらうー。」
「おなか減ったー。」
「君たちは誰かな~?まぁ誰でもいいや~。」
『風よ吹け。ウインド。』
軽い突風が起こる。まずは小手調べといったところらしい。
「勝負なんか、してやらないもんねー。」
「もんねー。」
ダンジョンコアたちも魔法で対抗する。
軽い小競り合いの中、ダンジョンコアの一人がいなくなっていることに着ぐるみ男が気が付いた。
「あれ~?」
「こんにちは猫さん!」
一瞬の出来事だった。ダンジョンコアが着ぐるみ男の隣に現れたかと思うと、男の首根っこをつかんだ。
「ぎゃっ!首が締まるっ!」
「バイバーイ。」
ダンジョンコアは転移した。
「成功したー!」
「私たちもいこー!」
緑壁の森の奥深く、男たちのダンジョンがある綺麗な場所。
「疲れたー。なんか魔力使い切っちゃった感じがするー。」
「助かった・・・ありがとう。」
「ここって、どこ~?」
どうやら、一緒に連れてきてしまったらしい。
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