12. 幼馴染を地獄に落とす……?

薄暗い空間。立ち込める湯気。

湯気の発生源を見れば、真っ赤な液体。


何も知らずに来れば、ここは地獄なんじゃないかと思ってしまいそう。


……隣のナルみたいに。


「え!?え!?何これ絶対やばいって!」


ここは結構有名な温泉宿、『地獄温泉』。

今日はナルと2人っきり……なんてことはなく、ママに連れてきてもらってここにいる。


「ほら、びびってないで行く」


「ま、まだ心の準備が!

あ!?そんなに引っ張らないで!?」


この温泉が人気な理由は、この真っ赤な温泉にあるらしい。

詳しくは知らないけど美肌とかいろいろ効果があるらしくって、ママも「女子力アップにいいわね!」って言ってた。


ちなみに、男湯、女湯、混浴ってあったけど今日の命令権を使って混浴に連れてきた。

もっとも、ナルはもうそんなこと気にする余裕もないみたいだけど……


「えいっ」


「へ──?」


ザパーン……


ふふふ……ナルを地獄に突き落としてやった。

周りにお客さんいないし……このくらい許され──


「ひゃうっ!?」


ザパーン……


「そういうのは保護者のママ的には、危ないからやめて欲しいわね〜」


温泉の中から顔を出すと、注意する言葉とは反対に楽しそうなママの姿。

その手には私から剥ぎ取ったタオルが……あ


「ナル、あんまり見ないでっ……」


私が混乱している隙に、ジーッと私のことを見ていたナル。

すぐに背を向けると、ナルも慌てて背を向ける。


そんな様子をママがニヤニヤしながら見てたのはムカついたけど、今は無視することにした。

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