3. じゃんけんでも、負けるとやっぱり悔しい

「おはよ〜」


僕の名前は日比谷ひびや夏也かや

普通の、どこにでもいる高校生2年生だと思う。


僕にはたった1人、親友というか憧れの人というか。

そんな人が居る。


「んー……」


だらしなく返事を返してくれたのがその人、樹崎くんだ。


机にうつ伏せになって負のオーラを漂わせている樹崎くんの隣まで行くと、そこには1冊のノートが開かれたまま置かれている。


「あっはは……。

今日も負けちゃったんだね……」


ノートには『101 グー ✕』と書かれている。

101回目、グーで負けという意味。


「なーんで勝てないんだろうなぁ……」


1ページ戻ると、そこには1〜100までずらりと『✕』が並んでいる。


「樹崎くん、別にじゃんけん弱いこともないのにね」


樹崎くんは、幼馴染の花包さんのことが好き。

それはみんなが知っていること。


でも、2人の事情を知っている人はあまりいない。



そんな嘘みたいなことを2人はやっている。

しかも、今のところ101戦101敗だというのだから本当に冗談みたいな話だと思う。


でも、それだけだと樹崎くんに得しかないから条件もあって、勝負が一日1回だとか、負けたら一つだけ花包さんの言うことを聞くとかだ。


「なぁ日比谷。俺とじゃんけんしないか?」


「え?……どうしたの急に?」


突然の提案に、僕は少し驚いてしまった。


樹崎くんはあまりじゃんけんをしたがらない。

それは、花包さんとのじゃんけん以外で勝ってしまったら運の無駄遣いになるかららしいんだけど、それだけに意外だった。


とは言え、断る理由もないし素直に応じる。


「「じゃんけんポン」」


グーとチョキ……僕の勝ちだ。


「もうダメだぁ……」


あれ!?思ってたより重症みたいだぞ!?


「樹崎くん!?しっかりして!」


この後ホームルームで先生が来るまで、僕は樹崎くんを励まし続けることになってしまった。

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