第13話予期せぬ再会と交錯する運命

龍河、シーラ、バトラーの三人は、国境での戦いが繰り広げられている戦場に到着した。広がる戦場は混乱と破壊で満ちており、魔族と人族の軍勢が激しくぶつかり合っていた。霧が薄く漂い、視界が悪い中での戦いは、ますます不穏な空気を感じさせた。


「これは……思った以上に激しい戦いですね。」バトラーが戦況を見渡しながら呟いた。


「何かがおかしい……ヒト族の対応があまりにも早すぎる。」龍河は不安を感じながら、戦場の様子を観察していた。通常なら、魔族の侵攻に対する準備にはもっと時間がかかるはずだ。だが、ヒト族の軍勢は既に完全に整っており、まるでこの戦いが始まることを知っていたかのような動きを見せていた。


「これは罠かもしれないですね……しかし、今はそれを確かめる余裕が。目の前の敵に集中しましょう。」シーラが緊張感を滲ませながら言った。


そんな中、戦場の前線でひときわ目立つ男がいた。彼は一人で数多くの魔族を次々と薙ぎ払っており、その力は圧倒的だった。どんな攻撃も彼の前では無力で、まるで嵐のように敵を蹂躙していく。


「誰だ、あの男は……?」龍河はその男の存在に目を奪われた。


「間違いない……あいつを止めなければ、この戦いはますます不利になる。」龍河は深くローブを被り、顔を隠しながら前線へと身を投じることを決意した。「俺が行く。あの男を止める。」


「気をつけてください、龍河様……」シーラは心配そうに見守った。


龍河は戦場の最前線へと駆け込み、目立つ男の前に立ちはだかった。男の目には鋭い光が宿り、そのヘルムの下には隠された強さが感じられた。二人の視線が交錯する瞬間、龍河はその男がただの兵士ではないことを悟った。


「お前を止める……!」龍河は決意を込めて刀を構え、葛城流抜刀術の第一の型「迅雷」を発動した。瞬時に放たれた一閃が、男のヘルムを切り飛ばし、その素顔を露わにした。


「……!」龍河は驚愕し、息を呑んだ。そこに立っていたのは、かつての親友であり、KORYUの仲間である奏多琥太郎だった。


「琥太郎……?」龍河の声には、驚きと混乱が入り混じっていた。


琥太郎もまた、龍河の技に驚き、その顔を見つめた。「龍河……君だったのか……。」


二人は数秒間、ただ見つめ合っていた。戦場の喧騒が一瞬静まり、かつての友情と絆が蘇る瞬間だった。


「琥太郎、何でここにいるんだ……?何があった?」龍河は混乱しながらも、再会の喜びを抑えられなかった。


「僕が聞きたいのは同じだ……君がここにいる理由を。」琥太郎は冷静に言い返したが、その目には戸惑いが浮かんでいた。


「琥太郎、この戦いには意味がない。今はお互いに命を奪い合う時じゃないんだ。軍を退いてくれ、これ以上の戦いは無駄だ。」龍河は真剣な表情で説得を試みた。


琥太郎は一瞬黙り込んだが、やがて深い息を吐き、龍河の言葉に耳を傾けた。「……確かに、君の言う通りかもしれない。この戦いは……何かが間違っているように思える。」


「俺たちが戦うべき相手は、ここにはいない。今は一度退いて、状況を整理しよう。」龍河は強く訴えかけた。


琥太郎はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。「分かった、龍河。君を信じる。僕たちは直ちに退くように命令しておく。」


琥太郎はその場で軍を引く命令を下し、ヒト族の兵士たちが次々と後退していく。戦場は徐々に静寂を取り戻し、激しい戦いは一旦の終息を迎えた。


龍河は胸を撫で下ろしながら、再び親友と向き合った。「琥太郎、俺たちには話し合うべきことがたくさんある。ここではなく、安全な場所で。」


「そうだな、龍河。僕たちは……また会うべきだったんだろう。」琥太郎はその言葉に頷き、二人は再び友情の絆を確かめ合った。


彼らの再会は、ただの偶然ではなかったのかもしれない。運命が二人を引き合わせたことで、この戦いの本質が明らかになりつつあった。龍河は今後の展開に備え、再び親友と共に立ち上がる決意を固めた。

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Crossing of darkness 虎野離人 @KONO_rihito

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