第12話レイラの成長と迫りくる侵攻
数ヶ月が経過し、龍河たちは拠点での生活を続けながら、レイラの状態を注意深く観察していた。レイラは依然として感情が乏しいままだったが、日々の生活の中で少しずつ変化が現れていた。
最初はただ命令に従うだけだったレイラが、次第に自分から小さなリアクションを見せるようになってきた。例えば、シーラが料理を教えるときに「おいしい」と言葉を発することや、龍河が剣術の基本を教えるときに「難しい」と呟くことがあった。
「レイラ、最近少しずつ感情が芽生えているようだな。」龍河は彼女の変化に気づき、優しく声をかけた。
レイラはその言葉に一瞬戸惑ったように見えたが、やがて冷ややかな口調で答えた。「感情……よくわからない。でも、あなたたちといると……何かが変わっていくような気がします。」
シーラもレイラの変化を感じ取っていた。「確かに、レイラは少しずつ変わってきています。まるで、私たちと過ごすことで新しい自分を見つけているかのようです。」
「それは良い兆候ですね。彼女が本来の自分を取り戻すことができれば、我々にとっても大きな力になるはずです。」バトラーが頷きながら答えた。
そんな穏やかな日々が続いていたある日、バトラーが急ぎ足で龍河たちのもとにやってきた。
「龍河様、ベルモンド様、大変なことになりました。侵攻が開始されたとの知らせが入りました。」バトラーの表情は硬く、その声には緊張感が滲んでいた。
龍河はその言葉に驚き、すぐに態勢を整えた。「ついに始まったか……セリーヌの提案が実行に移されたんだな。」
ベルモンドも同様に表情を引き締めた。「これは避けられない戦いか……。だが、レイラをどうするかが問題だ。彼女を戦場に連れて行くわけにはいかない。」
シーラが心配そうに言った。「レイラを安全な場所に置いておきたいですね。でも、ここが安全とは限りません……。」
「ベルモンド、君はここに残ってレイラを守ってくれ。彼女を守れる者が必要だ。」龍河は冷静に指示を出した。
「分かった、龍河。ここでレイラを守る。お前たちは国境に向かって戦況を見極めてくれ。」ベルモンドは強い決意を持って答えた。
レイラはそのやり取りを静かに見守っていたが、自分が置かれている状況を少しずつ理解し始めているようだった。「ここで待っています……。」
龍河は彼女の頭をそっと撫でた。
「行きましょう、龍河様。時間がありません。」バトラーが龍河に促した。
「戦場で何が待っているかはわからないが、俺らはこの戦いを止めるために全力を尽くす。」龍河は刀をしっかりと握り、国境へと向かう決意を新たにした。
龍河とバトラー、そしてシーラは急ぎ国境へと向かった。彼らの心には不安と決意が交錯していた。国境で待ち受ける戦いが、ただの侵攻に留まらないことは明白だった。彼らは、ミハナの影響やレイラの正体に関連する何かが潜んでいると感じていた。
道中、龍河は考えを巡らせた。レイラの存在、彼女が徐々に見せ始めた感情、それらがこの戦いにどう関わってくるのか。全てがまだ謎に包まれていたが、彼は自分の使命を果たすために、前進するしかなかった。
国境に到着したとき、彼らを待ち受けていたのは、広がる戦場の光景だった。霧の中での戦いは、ただの力のぶつかり合いではなく、複雑な策謀と陰謀が絡み合っていることを予感させた。
「これが……始まってしまった戦いか……」龍河は戦場を見渡し、覚悟を決めた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます