第11話レイラと拠点での再出発
魔王候補たちとの議論を終え、龍河たちは急ぎ拠点へと戻ることを決意した。人族への侵攻が決定される中で、彼らは怜に似た少女――怜であって怜ではない彼女の存在を保護し、その正体と役割を解明する必要があった。
要塞での戦いの後、彼女はただ静かに龍河たちに従っていた。その無表情な顔立ちと、機械的な動作にはどこか違和感があり、まるで何かにプログラムされた存在のように見えた。
拠点に戻る道中、龍河は少女をそっと見つめながら、頭の中でいろいろな思いが交錯していた。
「この子は……怜なのか?それとも……?」龍河は心の中で問いかけ続けたが、確かな答えは得られなかった。
拠点に到着した後、龍河たちは少女を迎え入れる準備を整えた。シーラとバトラーが彼女の身の回りの世話をしながら、龍河とベルモンドはその正体について話し合った。
「この子の名前をどうしましょうか?」シーラが龍河に問いかけた。
「そうだな……怜に似ているが、彼女は怜ではない。新しい名前をつけてやるべきだろう。」龍河はしばらく考えた後、静かに言葉を続けた。「彼女の名前は……『レイラ』だ。」
「レイラ……」シーラはその名前を口に出してみた。「それはいい名前だと思います、龍河様。」
ベルモンドも頷き、名前が決まったことに賛同した。「レイラか……この子がどんな存在なのかはまだわからないが、まずは彼女のことをもっと知る必要がある。」
しかし、レイラと名付けられたその少女は、感情をほとんど表に出さなかった。彼女の瞳には光が宿っていながらも、その目はどこか空虚で、感情の欠如が明らかだった。彼女が話す言葉も、まるで指示に従っているだけのように機械的だった。
「レイラ、何か覚えていることがあるか?」龍河は穏やかに問いかけたが、彼女はただ首を横に振るだけだった。
「いいえ……覚えていることはありません。ただ……あなたたちの言うことに従います。」レイラの声は淡々としており、感情が感じられなかった。
「まるで……プログラムされたようだな……」ベルモンドが呟く。「彼女は何かしらの操作を受けているのかもしれない。」
「確かに……彼女は怜に似ているが、その内面は別物のようだ。」龍河は重々しく言葉を続けた。「彼女がどうしてこんな状態になっているのか、そしてミハナが何を企んでいるのか……それを解き明かさなければならない。」
シーラもまた、複雑な思いを抱えていた。レイラの無表情な顔を見るたびに、父ミハナへの憎しみが再び胸に湧き上がる。「あの人が……この子をこんなふうにしたのだとしたら、許せません……」
「シーラ、気持ちはわかるが、まずは冷静になって彼女のことを調べよう。彼女が我々にとって重要な鍵を握っていることは間違いない。」龍河はシーラの肩に手を置いて優しく諭した。
シーラは深く息をつき、少し落ち着きを取り戻した。「そうですね……私もこの子のことをもっと知りたいです。あの人が何を考えていたのか、知るためにも……」
その後、龍河たちはレイラを拠点に保護し、彼女の過去やミハナとの関係を探るための調査を開始した。彼女の記憶や行動パターンを分析することで、何かしらの手がかりを得ようと試みたが、簡単に解決する問題ではなかった。
レイラは依然として感情をほとんど見せず、ただ与えられた指示に従うだけの存在に見えた。彼女がどうしてここにいるのか、そして彼女の本当の目的は何なのか、それは依然として謎のままだった。
しかし、龍河たちは諦めなかった。彼らはレイラを守りながら、少しずつ彼女との絆を築いていくことを決意した。レイラが持つかもしれない力とその影響を慎重に見極めながら、彼らは今後の戦いに備えて準備を進めた。
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