第9話ゴーレムとの戦いとミハナの敗走

要塞の内部で緊迫した空気が漂う中、ミハナは冷徹な笑みを浮かべながら手を掲げた。その動きに応じて、周囲の錬金術装置が一斉に動き出し、異様な力が渦巻き始めた。


「見せてやろう、私の錬金術の真髄を……」ミハナが言葉を放つと、地面が震え始め、巨大な影が現れた。


「ゴーレムだ……!」バトラーが驚きの声を上げた。


ミハナが錬金術で作り出したのは、圧倒的な威圧感を放つ巨大なゴーレムだった。石と鉄が組み合わさり、まるで生きているかのように動くその姿は、恐ろしい力を感じさせた。ゴーレムの目が光り、ミハナの命令を受けて動き出した。


「これが私の力だ。お前たちがここで何をしようと、このゴーレムには勝てはしない。」ミハナは自信満々に言い放った。


「そんなことはない!」龍河は刀を構え、ゴーレムに立ち向かう覚悟を決めた。「俺たちが必ず倒してみせる!」


バトラーとベルモンドも龍河の隣に立ち、それぞれの力を使ってゴーレムに対峙した。バトラーは格闘技を駆使してゴーレムの動きを封じ、ベルモンドはその鋭い爪でゴーレムの防御を切り裂こうとする。しかし、ゴーレムの体は硬く、簡単には崩せなかった。


「この硬さ……一筋縄ではいかないな……!」バトラーが叫ぶ。


「だが、諦めるな!何としてもここで倒すんだ!」ベルモンドも全力でゴーレムに攻撃を加え続けた。


一方、ミハナはシーラに目を向けた。「シーラ、お前もまた私に挑むつもりか?」


シーラは父親に対する激しい憎しみを胸に秘め、錬金術を発動させた。「あなたを……ここで終わらせます!」


シーラは錬金術を使って地面から鋭い刃を無数に生成し、ミハナに向けて放った。彼女の攻撃は正確で、ミハナに一撃を加えようとする。しかし、ミハナは一瞬のうちに防御の魔法を発動させ、刃を全て弾き返した。


「その程度か、シーラ。まだまだお前は私には及ばない。」ミハナは冷ややかに笑いながら、逆にシーラに強力な錬金術の攻撃を仕掛けた。


シーラは必死に防御しようとしたが、ミハナの圧倒的な力の前に次第に追い詰められていった。彼女は何度も攻撃を受け、傷を負いながらも必死に立ち向かうが、ミハナの力はあまりにも強大だった。


「くっ……まだ、まだ負けるわけにはいかない……!」シーラは歯を食いしばりながら再び立ち上がろうとするが、その体は限界に近づいていた。


「もう終わりだ、シーラ。」ミハナが冷たく言い放ち、決定的な一撃を加えようとしたその瞬間、龍河が彼らの間に割り込んだ。


「シーラから離れろ、ミハナ!」龍河は怒りに満ちた声で叫び、刀を抜いた。


龍河は葛城流抜刀術の第二の型、「月影」を発動させた。その動きは一瞬の閃光のように速く、ミハナが反応する間もなく、その刃が彼の体に深く切り込んだ。


「何……!」ミハナは驚愕の表情を浮かべ、自分の胸に走った深い傷口を見つめた。彼は信じられないというように龍河を見上げた。


「お前は……まだ完全には戻っていないと言っていたが、その力は確かに脅威だ……」ミハナは呻くように言いながら、一歩後退した。「だが、ここで私が終わるわけにはいかない。」


ミハナは重傷を負いながらも、強引に錬金術の力を使って自身を転移させようとした。その瞬間、怜に似た少女が悲しげな目でミハナを見つめていた。


「シーラ……この研究はまだ終わっていない。」ミハナは静かにそう言い残し、転移の魔法でその場から姿を消した。


「待て、逃がすか!」龍河は追いかけようとしたが、転移魔法の効果でミハナの姿は既に消えていた。


「父さん……」シーラはその場に崩れ落ち、肩を震わせた。彼女の目には涙が溢れていたが、それを拭おうともせず、ただ呆然とその場に座り込んだ。


「シーラ……」龍河は彼女の肩にそっと手を置いたが、シーラはそのまま涙を流し続けた。


要塞の中には、静寂が訪れた。ゴーレムはミハナの消失と共に動きを止め、倒れ込んで無力化していた。そして、残されたのは怜に似た少女だけだった。


「怜……君なのか……?」龍河はその少女に近づき、静かに問いかけた。しかし、少女はただ龍河を見つめるだけで、言葉を発しなかった。


「君は一体……」龍河は混乱しながらも、少女を見つめ続けた。彼女の存在が、この戦いに何を意味するのか、それはまだ謎に包まれている。しかし、彼女が何か重要な鍵を握っていることは間違いなかった。


「龍河様……今は彼女を保護して、ここを離れましょう。」バトラーが冷静に提案した。


「そうだな……ミハナのことはまた後で考えよう。今は彼女を安全な場所に……」龍河は決意を新たにし、少女を連れて要塞を後にすることにした。

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