第5話ベルモンドの告白と謎のローブの男

龍河とバトラー、シーラの支えにより、ようやく正気を取り戻したベルモンドは、深い息をつきながらその場に座り込んだ。先ほどの激しい戦いの後で、彼の顔には疲労の色が濃く浮かんでいる。しかし、今は冷静さを取り戻し、話ができる状態になっていた。


「ベルモンド……大丈夫か?」龍河が優しく声をかけると、ベルモンドはゆっくりと顔を上げ、龍河を見つめた。


「……ああ、少しずつ落ち着いてきた。助けてくれてありがとう、リューガ……」ベルモンドの声には、かつての友のような親しみが感じられた。


龍河は頷きながら隣に腰を下ろし、彼が話しやすいように促した。「俺に何があったのか、話してくれるか?」


ベルモンドは一瞬考え込んだが、やがて口を開いた。「俺は……魔王候補としての力を持っていたが、正直言って魔王になることを望んでいなかったんだ。」


「どうしてだ?」龍河は驚きながらも、その理由を尋ねた。


「俺は……平和に生きたかった。確かに、強さを求めて訓練を積んできたが、力を持つことに対しては、そこまでの執着はなかったんだ。むしろ、力を振るうことの恐ろしさを知っていたからこそ、その責任を背負いたくはなかった。」ベルモンドの声には、深い葛藤が滲んでいた。


「だが……」ベルモンドは龍河を見つめ、その目に強い決意を込めた。「龍河、お前は違う。俺はお前が魔王にふさわしいと感じていた。お前の強さだけじゃない、正義感や仲間を守ろうとする心、そして何よりも、お前には人を導く力がある。」


龍河はその言葉に少し戸惑いを感じたが、ベルモンドの真剣な目を見つめ返した。「だが、もしお前が望まないなら、なぜ……」


ベルモンドは苦しげに頭を抱え、重々しく語り始めた。「あの日……ローブを着た男に会ってから、俺の記憶は曖昧なんだ。あの男と話をしたのは覚えている。だが、その後のことがどうしても思い出せない……ただ、気がついたら俺はお前たちに襲いかかっていた。」


「ローブを着た男……?」龍河はその言葉に引っかかりを覚えた。彼らの戦いを影で操っている存在があるのではないかという予感が、現実のものとして浮かび上がる。


「そうだ。黒いローブを纏い、顔を隠した男だった。その姿を思い出そうとすると、頭が割れるように痛む……だが、その男が俺を何かしらの方法で操っていたんじゃないかと思う。」


シーラとバトラーもその話に耳を傾け、深い思案に沈んだ。


「龍河様、この情報は非常に重要です。もしベルモンド様が言うように、そのローブの男が背後で糸を引いているとしたら、我々はこの戦いを通じて何か大きな陰謀に巻き込まれているのかもしれません。」バトラーが冷静に分析した。


「俺たちはその男を追わなければならないな……」龍河は決意を新たにした。ベルモンドが自らの意思で動いていたわけではないと知り、今は敵意を抱く理由がなくなった。


「龍河……」ベルモンドは一息ついてから、真剣な表情で龍河に語りかけた。「俺はもう、魔王候補としての地位に未練はない。お前にこそ、その資格があると思っている。俺を救ってくれたことに感謝している。そして、もしお前が許してくれるなら、俺はお前に協力したい。」


「協力してくれるのか?」龍河は予想外の申し出に驚いた。


「ああ。お前には、その資格がある。俺の力が必要なら、喜んで貸そう。だが、そのローブの男を見つけ出し、この戦いを終わらせるために協力してほしい。」


龍河はしばらく黙考した後、ベルモンドの手を取り、力強く握り返した。「ありがとう、ベルモンド。お前の助けがあれば、この戦いに勝利することができるかもしれない。」


その言葉に、ベルモンドは微笑んだ。「俺も、もう自分の力から逃げるつもりはない。ともに戦おう、龍河。」


シーラとバトラーもその決意に賛同し、四人は新たな同盟を結んだ。彼らはこれからの戦いに備え、力を合わせて立ち向かう決意を固めた。

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