第3話錬金術師シーラと執事バトラーの力

龍河が目を覚ましたその日、屋敷の周囲が急に慌ただしくなった。窓の外を覗くと、遠方から大勢の者たちがこちらに向かってくるのが見えた。獣人族の群れが、鋭い牙と爪を剥き出しにして、龍河たちのいる屋敷へと迫っていた。


「リューガ様、大変です!」シーラが慌てた様子で報告に駆け込んできた。「獣人族の群れがこちらに向かってきています。彼らの長も魔王候補の一人です!」


龍河はその言葉に緊張を覚えた。魔王候補である自分に挑んでくる存在が、すぐそこまで迫っているのだ。彼はこの新しい世界のルールや、自分の力をまだ理解しきれていない。


「バトラー、シーラ、準備はできているか?」龍河が問いかけると、二人は力強く頷いた。


「リューガ様、どうかご安心ください。我々が全力でお守りします」とバトラーが冷静に答える。


「そうです、リューガ様。私たちにお任せください」とシーラもまた、自信に満ちた声で応えた。


龍河は二人の覚悟を見て、自分の無力さを感じずにはいられなかった。しかし、それでも今は彼らに頼るしかなかった。


獣人族の群れが屋敷の近くまで迫り、ついに戦いの幕が切って落とされた。獣人たちは圧倒的な数で、次々と攻撃を仕掛けてくる。その凶暴さは尋常ではなく、普通の戦士であれば瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。


だが、シーラとバトラーは違った。シーラは素早く地面に手をかざし、錬金術の力で大地から武器を作り出した。その手はまるで魔法のように土を操り、瞬く間に無数の鋭い刃を形成していく。


「これが錬金術の力です!」シーラが叫ぶと、その刃が一斉に獣人族の群れに向かって飛び出した。鋭い刃は彼らを次々と切り裂き、その数を大幅に減らしていく。


一方、バトラーは無数の獣人たちに囲まれても動じることなく、冷静に戦っていた。彼はあらゆる武術を極めており、その動きはまるで舞のように美しかった。攻撃を受ける前に回避し、敵の隙を突いて致命的な反撃を加える。次々と倒れていく獣人たちは、バトラーの技の前に成す術がなかった。


「す、すごい……」龍河は圧倒される二人の力を目の当たりにし、自分の無力さを痛感した。彼も戦いたいという気持ちはあるが、まだ自分の力をうまく扱えず、ただ見ていることしかできなかった。


そんな時、龍河の脳裏に一つの考えが閃いた。


「シーラ、俺に刀を作ってくれ。形状はこうだ……」


龍河は自分の頭の中にある、かつての記憶にある刀の形状をシーラに伝えた。シーラはすぐに錬金術を使い、龍河の言葉通りに地面から刀を生成した。


「お待たせしました、リューガ様!」


シーラが差し出した刀を、龍河は慎重に受け取った。刀は手に馴染み、鋭い刃が光を反射して輝いていた。その瞬間、龍河はかつての感覚が蘇るのを感じた。


「ありがとう、シーラ。これで俺も戦える……!」


龍河は刀を握りしめ、自らの決意を胸に前に進んだ。まだ不安は残っているが、仲間たちと共に戦うための力を得たのだ。彼の目の前には、バトラーとシーラが繰り広げる戦場が広がっている。

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