第4話勇者アランの誕生

19年前、小さな村の教会に生まれたばかりだと思う男の子の赤ん坊が泣いていた。

金色の短い髪の毛が分かるように金色の瞳を持っ小さな赤ん坊が、バスケットの中で毛布を被せ雪の降る寒い日に教会の玄関前に捨てられていた。

教会での捨て子は珍しくはなかった。教会では15歳まで面倒を見て貰えるが、5歳から働く子供達は沢山いた。教会に国からお金が入ってくるが子供の人数が多い為、国からのお金では生活が苦しく働く事が出来る子供には働きに行かせるのが当たり前の事だった。

勇者アランもその一人だった。

五歳から働き始めたアランは色々な仕事を小さな身体で覚え働いていた。

靴磨きに皿洗い、貴族の屋敷の草むしり等いろんな仕事を小さな身体で働き続け、自分の後から入った弟や妹達の為にアランは働き続けた。

そんなアランに目をつけた貴族の貴婦人達が成長して容姿が見惚れる程に成っていたアランに身体の関係を求めて来るようになり、アランは僅か10歳で身体の関係を持つようになり、今まで働いていた倍のお金を手に入れ、その後も貴婦人達との身体の関係は続いていた。

身体の関係は女だけとは限らず男からも誘われる事も何度もあった。

そんな生活の中で転機が訪れたのは、アランが13歳の頃左胸に勇者の紋章が現れ身体全身光り輝き力が溢れる程だった。

アランは生まれ育った教会を離れ勇者が集まる教育の場での生活が始まった。

紳士としての言葉使い、勉学、ダンス、テーブルマナー、乗馬に剣の稽古…貴族の生活全てを叩き込まれ勇者となり、最初の任務は冒険者のパーティーとの任務だったが、パーティー仲間の女がアランに迫り寄り仲間同士アランとの喧嘩に成る事が多かった。

時には生まれ持った美が役に立つ事もあれば、憎まれる事も幾度もあった。

王からの呼び出しで引き受けた今回の件で不安が無いわけではなかった…100年眠り続け、人間なのかも分からない魔法使いを連れての任務に不安が広がり、しかも実体が無いかも知れないモノを相手に闘わなくてはならない不安はあった。

勇者アランは建物が見えるまで森を歩き続け、魔物がいつ現れてもいいように気を張りつめ、一軒家を探し続けた。

「……本当にこの森の中で家があるのか?」

城から出て歩き続ける為疲れていた勇者アランの目の前がグニャリと歪むのが分かった時、その先には木造二階建ての一軒家が建っていた。


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