第15話 リアンとジェイド。
「さぁ、お湯を持ってきますからね。それとも人払いをさせますから浴場まで行かれますか?」
「いや…ここで…」
「はい!」
リアンは眩しい笑顔でお湯を取りに行くとすぐさま戻ってくる。
ジェイドは決心がつかないのかカーテンから出られずに居る。
「もう、まだカーテンの中なんかに居て!」
リアンはカーテンの中に入ると力づくでジェイドを連れ出してしまう。
手を掴まれたジェイドは慌てて手を払おうとするが「怖くありません!気持ち悪くもありません!何度も言わせないでください!」と言って桶にジェイドを座らせると頭からお湯をかける。
「お湯加減はどうですか?」
「熱く…ない」
「良かった。それよりもジェイド様?見た目より臭いを気にしてください。レディの前ですよ?」
「え?あ…済まない」
ジェイドは自身が何年も風呂に入っていない事を思い出して赤くなる。
「ふふ。さあ頭を洗いますからね!
うわっ、泡立たない。コレは戦いですね!」
その後、リアンは傷だらけのジェイドに痛くないかと何遍も聞きながら身体を洗う。
お湯はすぐに汚くなるとそれを何遍も捨ててきては甲斐甲斐しくジェイドの世話をする。
30回目のお湯交換でようやく殆どの場所が洗い終わる。
「さあ、後は…」
「いや、そこは自分で!」
残された場所はジェイドの大切な場所で一国の姫においそれと見せられるものではない。
「御遠慮なさらずに!…まぁ!」
「…言わないでくれ」
リアンが驚くのも無理はない。
ジェイドの陰部、臍の下から腿の付け根までは傷一つない綺麗な身体だったのだ。
「兄様より御立派…じゃなかった。ここは傷が…」
傷一つない事に驚いたリアンが驚きを口にする。
「ああ、ジルが…ジルツァークが守ってくれたんだ」
そう。ジルツァークがジェイドの心を守る為に介入したのは大切な部分を汚されない為の行動で、ここだけは何をしても傷1つ負う事は無かった。
「ああ、勇者を1つに戻すためにですね」
「多分な」
「でも良かったです。
これでジェイド様は勇者の誓いを叶える為に私かミリオン様と契りを交わす事も可能ですね」
「い…いや。俺は…」
「ふふ、それはまた今度としまして。
とりあえず洗いましょう」
ジェイドはそこだけはと必死になってリアンを制止してなんとか自分で洗った。
ようやく綺麗になった事で風呂が終わる。
「ふぅ、ではこの服にお着替えください。私はお湯を捨ててきますね」
リアンが臭いのきつい汚水が入った桶を持ちながら言う。
「え?洗い終わったから」
「戻ってきてはご迷惑ですか?」
またリアンの圧がジェイドを襲う。
「いや、その…」
「キチンとお礼も申し上げない、お礼もさせないなんてブルアの姫に恥をかかせるおつもりですか?」
そうは言われてもここまてまのやり取りで恥も何もない気がするのだがジェイドはリアンの圧に勝てなかった、
「わかった…」と弱弱しく答える。
「はい。では着替えてお待ちくださいね。まったく、灰色の髪色かと思ったら綺麗な緑色なんですね。きっとその服は似合うと思いますよ?」
そう言ってリアンが置いて行ったのは銀の寝間着で確かに髪色とは似合う気がした。
「兄さん!やっぱり兄さんは銀が似合うよね!兄さん!」
ジェイドが一瞬大切な人を思い出して寝間着を持ってうずくまる。
そのまま嗚咽を上げてしまった。
「エルム…エルムっ…ぅ…ぉぉぉ…」
「ジェイド様!?」
リアンは部屋に入ってすぐに見えた泣き崩れるジェイドを見て驚く。
「どうされました?」
「エルム?…!!?」
ジェイドは混乱していてリアンを見ても初めはリアンだと気づかなかった。
「エルム…さん?」
「いや…何でもない」
ジェイドは平静を装って何でもないと言って顔を背けるがリアンはジェイドの頭を捕まえると優しく撫でる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます