第14話 人の闇。
「ミリオンの問いに答えないとな。
人間の攻撃でも傷痕が残る条件があるんだよ、
なんだと思う?」
「…まさか…」
「明確な殺意?」
ミリオンと先ほどの男たちの違いはそれしかなかった。
「正解だ。この傷は亜人共に捕まってから拷問で付いたものだ。
拷問官には亜人共に忠誠を見るために人間も選ばれていたからな。
ただ選ばれただけで仕方なく傷付けられれば…ミリオン、お前の攻撃と同じで消えていたが消えないで残ったままだ。
どう言うことかわかるよな?」
ジェイドが真っ黒になった腕を見て鼻で笑う。
「そんな…」
「嘘だろ?」
もうミリオンだけではない。
セレストも震えていた。
「本当さ。
防人の街で投げつけられた石。ノコギリで斬り付けられた腕や背中、焼きゴテを押しつけられた腹。全部に殺意があった」
遂にミリオンは立っていられずに床にへたり込んで泣き始めてしまう。
「それが……人の闇…」
「な?人の闇、人の悪意が形取ったら俺だ」
そう言ってジェイドが力なく笑う。
「だからジェイドは…夜は別行動だったのか…」
「ああ、体の勇者の姿がこんな姿だったら人間の結束が揺らぐ。
ましてや傷は殺意を持った人間の攻撃。それも街一つの不特定多数からだなんてバレたら亜人共の思う壺だ」
「済まない…何も知らず…」
「謝んな。惨めになる。
とりあえず今晩はこの部屋を使わせて貰う。
ベッドは汚したくないから床で寝る。
この絨毯すら俺の寝ていたゴザより寝心地が良いしな」
「気にするな!それこそ使うべきだ!」
セレストが声を荒げる。
その顔は怒りに満ちているが何に怒っていいかわからないそんな顔だ。
「お前、良いやつだよな。とりあえずミリオンが限界だから休ませてやれよ。
俺は廊下には出られないからな。
セレストに頼むしかないし、風呂に入ってないからベッドで寝たら汚れるだろ?」
「だから気に…」とセレストが行った時に扉が開かれる。
ジェイドは慌ててカーテンに身を隠してセレストは扉を見て「誰も入るなと言ったはずだ!」と怒った所で次の言葉が出なくなる。
「リアン…」
「ジェイド様!聞き耳を立ててすみません。私にお世話をさせてください!」
リアンは部屋に入るとジェイドを見て明るく言い放つ。
「セレストの…妹…、ダメだ。俺を見ないでくれ!」
ジェイドは半狂乱になってリアンを拒む。
この旅が始まって初めて見るジェイドの姿にセレストとミリオンが驚いている。
もしかして…彼は純粋で心優しい人間なのかも知れない。
そう思っていた。
「ジェイド様!
私は火に巻かれかけた時も助けていただいた時もジェイド様のお姿を見ました。
見られて居ないと思って居たのはジェイド様だけです!」
リアンはジェイドから目を逸らさずにハッキリと言う。
「俺の…姿が……怖くない…のか?気持ち悪く…」
震える声でジェイドがリアンに聞く。
「ありません!ジェイド様は私を助けてくださった勇者様です。
あの火の中に飛び込んできてくださった勇気は正に勇者のそれです!」
「…ほ…本当…?」
「はい。今すぐにベッドで眠れるようにお湯とタオルを用意して参ります。そのボロボロの服はお脱ぎください!」
「え?」
「私がお世話をさせていただきます!」
何を聞き返してもリアンは明るくハッキリと言い切る。
その姿にジェイドは何も言えずにリアンのペースに飲まれていく。
「いや、君は姫で…俺は男で…その」
「大丈夫です。父様が言っていましたが兄様の粗末な物も見てきました!
気になさらないでください!
兄様!羨ましいからとジェイド様の裸を見ようとしないでミリオン様をお連れになってお休みください!」
「り…リアン?
僕は粗末じゃ…いや、そうじゃない。
姫が王子の…」
粗末なセレスト…セレストがリアンに意見をしようと口を開くのだが…。
「あー!うるさい!私がお世話をさせていただきます!兄様はとっととお休みなさい!
ジェイド様も!異論は認めません!」
その気迫にセレスト達は何も言えなくなりスゴスゴと退散をする。
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