第10話パーティ

あれから2ヶ月。

何もない。

当たり前だ。

酔った勢いだし、

もしかしたら覚えてないのかもしれない。

それでいいんだ。

「璃空、今週の金曜日に知り合いのパーティがある。連れいくから予定入れておけ」

「わかった。スーツでいいの?」

「いや、確か・・・」

そう言うとソファから立ち上がり、1枚のドレスを持ってきた。

「今回はこっちがいいな。着てみろよ」

薄い青いドレスを渡された。

そういえば、私の服を買いに行った時、なんだか勝手に決めていたのがあったな。

「わかった」

着替えて、


え!?


と、自分の姿に戸惑った。


これ・・・


「まだか?」

着替えると言って、一向にクローゼットから出て来ない私に、声をかけてきた。

おそるおそる出た。

「・・・これ、背中とか、肩とか凄い開いてて、大人っぽすぎない?」

上から下まで確認すると、つまらなさそうに言った。

「璃空に似合うのしか、俺は選んでない」

あまりに当然とばかりに言われ、動悸が激しく動いた。

「なら、いいけど」

「当日に髪型と化粧は他でやって貰う」

「わかった」

「どうした?顔赤いぞ」

「何でもない。着替える」

璃空に似合うのしか、

だったその言葉で、凄い嬉しかった。


当日、化粧や髪型をしてもらい、パーティ会場に行った。

確かに、今回はドレスだな。


年齢に関係なく、色とりどりのドレスを女性は着ている。

啓は、少し挨拶してくる、と言って離れた。

そう言えば、お母さんも何枚か持ってたな。

もう少しいいの買ってあげよう。きっと自分の服なんて何年も買ってない筈だ。

いっつも自分の事は後回しで、私達のことばかり気にしていたもの。

驚くかな?

色々買ってあげたら。

あ、でも啓に言わないといけないな。

反対されたらどうしようかなあ。

でも、自分のお給料からなら問題ないかな?

そんな事を考えながら、持っていたワインを飲み下ろした、

瞬間、

身体が、

凍った。


逃げ・・・なきゃ・・・。


「璃空!」

目の前にいるのだから今更逃げれる訳がない。

男は嬉しそうに、私の前に来た。

「探してんだ。今、どこにいるんだ?」

あなたから逃げてるのよ。

「知り合いのところにいるの」

目線を外す。

「家にも言ってないんだろ?」

不安そうに、わざわざ、顔を近づける。

「子供じゃないわ。いちいち言う必要もない」

家に行ってるんだ。

「携帯番号変えたんだろ?おじさんやおばさんに聞いても知らないて言われてさ、困ってたんだ」

あなたには教えないで、て釘刺してるから。

「この間、どうやって金工面したんだ?」

小声で、心配そうに、言う。


こいつ!


「あなたには関係ないわ」

離れようとすると、腕を掴まれた。

寒気がした。

振りほどこうとしたが、強く握られた。

「そんな顔すんなよ。今回はどうにか出来たんだろうが、次があるかもしれないだろ」

「よく言うわ!あなたが仕事を回さなかったからでしょ。家の会社は、あなたのところから仕事を半分は貰ってる。わざと回さなかったんでしょ!?」

「そうだよ」

ニヤリと嫌な笑いをする。

「璃空が俺と結婚すればそんな事しない。今回だって、璃空が俺のところに来やすい様にしてあげたのに。どこからそんな金工面したんだか。まあ、いいさ。どっちにしても、俺と結婚しなきゃ、あの会社は潰れんだ」

「卑怯よ!」

「何言ってる?俺達は一緒になる運命なんだ。俺は、昔から璃空しかいないんだ・・・。璃空はいい子だろ?おじさんやおばさん、そうだ、弟は大学行ってるんだったな。皆を幸せにするためには、璃空が、俺のところに来ればいいだけだ。俺はお前を愛してる」

怒りで声が出なかった。

変わってない、この人は。

 「璃空?」

啓の声が背後から聞こえた。

腕を離したが、

「俺の携帯は変わってない。いつでも電話くれ。早めがいいな。他の男と一緒にいる所を許せるほど、優しくないからね」

気持ち悪いくらいの優しい声で、去っていった。

「知り合いか?」

「・・・うん・・・。昔からの・・・取引先の人・・・」

触られた所を擦る。

汚い。

早く洗いたい。

「取引先?・・・璃空、顔色悪いぞ」

「・・・そう・・?」

「どうした?腕、真っ赤になってる」


あ・・・。


強く摩り過ぎて、かなり赤くなっていた。

「大丈夫か?帰ろうか」

泣きそうになるぐらい優しく聞いてくる。

「・・・ごめん、帰りたい・・・大丈夫?」

ここにいて、また会いたくない。

「ああ。挨拶終わったからな。帰ろう。璃空・・・本当に顔色悪いな」

そっと頬を触ると、優しく微笑み私の手を握った。


帰ってきて、

やっと、

安心した。

洗面所に行き、すぐに触られた腕を洗った。

ヒリヒリする。

分かってた。

逃げれないことも、

会社が、傾いた理由も。

私が、

自由になれないことも。

真っ青な自分が鏡に写る。

「璃空?」

心配そうに、声をかけてくる。


もう・・

ここにはいられない。

この人には、

迷惑かけれない。


「少し人によったのかも。ごめんね。着替えるね」

洗面所を離れ、啓の方にいく。

「いや・・・もう少し」

「啓?」

とても、大事なものを触るように、私にゆっくりと触れてきた。

「綺麗だが・・・確かに、肌が出過ぎだな」

撫でるように、背中を触る。

ピクリと身体が震える。

首筋に唇が当たる。

「・・・ん・・・」

私のその声に押されたように、強く抱きしめた。

「お前は・・・俺のものだよな・・・」

首筋から甘い声と、啓の舌が首元を舐めていく。

「そうだよ」

「じゃあ・・・抱かせろ・・・」

「・・・うん・・・」

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