第5話朝

目が覚め、

部屋の景色、

ベッドの質に、

現実を突きつけられた。


 そうだ・・・私は買われたんだ。


一昨日の土曜日から一緒に住み出した。普通なら有り得ないが、

一緒の寝室で、

一緒のベッドで寝ている。

恋人でもないのにおかしな関係だ。


 横を見ると、啓はいなかった。

触ると冷たい。

5時30分。

部屋を出ると、もうスーツ姿だった。

「もう出るの?」

「ああ」

短く答えると、携帯を見だした。

「ちょっと待って」

急いで、コーヒーメーカーをセットし、おにぎりを作る。


 良かった。早めにタイマーかけてて。


 ラップで包んでいる間に、コーヒーが淹れ終わった。

「はい」

「なんだ?」

「朝ごはん。車でも食べれるようにしたし、この水筒にはコーヒー入ってる」

怪訝そうに、眉を寄せ、受け取ろうとしない。

「はい。朝ごはん食べてないんでしょ」

「いつも食べない」

「じゃあこれからは食べて。その為に私を買ったんでしょ」

「・・・面倒なやつを買ったな」

そう言いながらも、受け取ってくれ、靴を履き出した。

「帰る頃にメール貰える?」

「なんで?」

あからさまなイラつきがわかった。

「帰る頃に、ご飯・・・用意できるかな・・・と」

「いちいちそんな事するのか」

怒ってる。

「・・・無理なら・・・いい・・・。行ってらっしゃい」

怖くて、顔を背けた。

「はあ。行ってくる」

大きな溜息をつかれ、出て行った。

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