第3話呼び方
「味はどうでした?」
超高級マンションの一室で、
ハンバーガー。
有り得ないわ、
と思いながらも、
美味しく頂きました。
それも、他にチキンも食べて、ドリンクも飲めて、久しぶりにお腹いっぱいに食べれた。
ゴミを片付けながら、豪華すぎる部屋に落ち着かずソワソワしてしまう。
車が高級なら、住む場所も、それ相応。
私のアパートより、
台所が広いし、
リビングも広いし、
幾つ部屋があるんだ?
「味?いや別に。俺は、食べれればいいんだ。味なんか興味無い。だから、料理に不安なんか持たなくてもいい」
「分かりました。あの、山神さん」
「その呼び方は会社みたいだ。他の呼び方しろ」
紙コップの珈琲を飲みながら、冷たく言われた。
なんだか・・・怖い・・・。
「じゃあ、山神様?ご主人様?」
「なんだそれ。お前、買われたくせに態度がでかいんだ。そのお前が、その呼び方だと、気持ち悪い。態度がでかい方が良いが、もし、へりくだったりしたなら、すぐに金を返してもらう」
「すみません・・・」
態度がでかい?
そんなつもりはないんだけど。
それに、買われた身分ならご主人様、と言って問題ないと思う。
それに、へりくだった態度が気に入らないなんて、変な人だな。
普通、その方が喜ぶと思うけど。
ともかく、態度がでかいおかげで気に入られたのなら、良かった。
だって、
もう、
返せない。
「じゃあ、啓毅さん?」
「親戚みたいだな。却下。他」
「他?」
なんだか面倒な人だな。
うーん、と考えるがこれ以上思い当たらない。
「呼び捨てしてみろ」
「さすがにそれは・・・」
失礼だよ。
「呼べ」
威圧的に上目遣いで見られ、小さくなった。
イケメンなだけに・・・目が怖いな・・・。
だが、逆らえない。
買われた身なんだから。
「・・・啓毅」
「なんか、違うな」
本気で考えている。
本当に、面倒な人だな。
「啓」
ともかく考えて呼んで見た。
「それで呼べ」
やっと頷いてくれて、ほっとした。
「分かりました」
「あと、その中途半端な敬語は辞めろ。使う気ないだろ」
さっきからすみません。
いたたまれず、私はドリンクを飲んだ。
「アパートは引き払ったのか?」
「・・・まだ・・・」
追い出された時のための保険に、とは言いづらい。
「引き払え。金がかかるだけだ」
「はい」
それは、確かだ。
少しでも貯めたい。
「あと、心配するな。俺は、女に興味無い」
「え!?ゲイ!?」
ああ、そっちですか。
すみません、少し引き気味です。
「おい・・・なんでそうなる。ノーマルだ。だが、興味無い。女と付き合う暇も、気持ちも、無駄だ」
「無駄・・・?」
「昼間は仕事なんだろ?」
「はい」
「残りの時間を家政婦のような仕事をしてくれたらいい」
「分かりました」
「分かった、だろ。いちいち言わせるな。腹が立つ」
「す、すみません・・・」
つい、俯いてしまった。
怖い・・・
はあ、とため息をつかれた。
ここで一緒に暮らすことになるんだから、
ちゃんと、
しないと。
落ち込む気持ちを我慢し、前を向くと目が合った。
そう、ね。
一緒に住むんだ。
「啓。冷蔵庫に何も無いから、買い物行ってくる」
飲み終わったカップを片付けながら、思い切って言った。
だって、本当に何も無い。
あるのはお酒だけ。
「確かにそうだな。今から出れるか?」
「一緒に行くの?」
「荷物があるだろ。これ、渡しておく。好きに使え」
そう言うと、クレジットカードをテーブルに出した。
「いいの?」
「じゃあ璃亜が払えるのか?出来もしない事を聞くな。黙ってうけとればいいだろうが」
また、苛立たせてしまった。
確かに言われている事は 正しいけど、う少し優しく言って欲しい。
とても威圧的で、怖い。
「そう、だけど。その、一緒に行くのに私に渡すの?支払いの時に啓が払えばいいと思うけど」
おずおずと答えると何故だが、驚かれた。
「・・・値段に関係なく買えるんだぞ?」
言っている意味はわかったが、啓が何故その言葉を言ったの分からなかった。
「確かに買えるけど、啓のカードでしょ?私のじゃないよ」
「ふうん。お前、真面目だな。欲がないのか?まあいい、持ってろよ。ともかく、璃亜が欲しいものは全部買えばいい。いいか、全部だ。このマンションで過ごすなら、このカードで買ってないものは俺は認めない。だから、全部、このカードで使え」
やっと意味がわかった。
この黒いカードは何でも、
幾らでも買えるんだ。
多分、同じように渡した人は物凄く高価なな物を買ったんだ。
だから、
値段、
と言ったんだ。
だが、
逆に、
このカードで全部監視される。
欲しいものを欲しいだけ買えば、全て明細として啓の手元に送られる。
でも、私にとっては足枷となるだけだ。
さっきの言葉。
ここで過ごすならこのカードを使わなきゃいけない。
洗剤1つにしても、
卵1つにしても、
些細な物全てをこのカードで買わないと認められない。
「なんか、ズルくない?」
「何をむくれているんだ?璃亜を買ったのは俺だろ。それが嫌なる出ていくか?」
意地悪な笑いを浮かべ、聞いてきた。
「・・・出ていかない。だって帰る所ないもん」
「分かってるなら文句言うな。出かけるついでに、ついでにアパートを引き払いに行くぞ」
「分かった」
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