第6話 突然の出現

 昼食後、出雲は自室に戻って体を癒していた。明日は平日で学校に行くので、友達や、クラスメイトたちが怪物の話をしているだろうと考えていた。だが、出雲が巻き込まれているとは知らないはずなので、なるべくその内容の会話をしないように気を付けようと決めた。


「怪物に巻き込めたことを知ると、色々聞かれると困るからその話をしないようにしよう。怪物の話で持ちきりだろうし、知らないって」


 その後、出雲は部屋で寛いで夕食を3人で食べ、家を満喫していた。そして翌朝になると、緊張をしながら朝食を食べていた。出雲のその様子を見た琴音が、サラダを食べながらお兄ちゃん緊張してるのと聞いてくる。


「少しね……久々じゃないのに久々に行くような感覚かな?」

「長い1日だったもんね! だけど、普通にしていれば大丈夫だよ!」

「そうだな。何もなかった感じで行くよ!」


 兄妹で楽しそうに話している姿を見ている楓は、早く食べちゃいなさいと二人に笑顔で言う。出雲と琴音の二人は時間がと言うと、すぐに食べ終えて準備をし始める。


 各々部屋でブレザーとセーラー服に着替えて準備をすると、家を出る時刻になっていた。出雲と琴音は共に部屋を出ると、最寄り駅まで歩いて行く。最寄駅から10分程度の場所で二人は別々の電車に乗り換える。


「じゃ、ここでお別れだねー。気を付けてねお兄ちゃん!」

「琴音も気を付けてなー!」


 中間の駅で二人は分かれると、出雲は自身の学校である星空学園高等学校に行ける電車に乗る。中間の駅から30分で行ける位置にある星空学園駅に到着した。駅に到着をすると、星空学園の生徒たちが多数駅にいるようであった。


「始業時間にはまだ時間があるけど、かなりの生徒が駅にいるな。みんな怪物の話をしているのかな?」


 出雲は駅の東口から出て星空学園高等学校がある方面に歩いて行く。その際に多数の生徒とすれ違うと、全員ではないが怪物の話をしていた。出雲は怪物の話をするよなと思いつつ、学校がある道を進んでいた。


「なんか小さな揺れが起きているような?」


 学校の姿が見えた位置で小さな揺れを感じた出雲は、そこで立ち止まって周囲を見渡した。出雲の近くにいる生徒たちも立ち止まって怯えていた。


「もしかして……この揺れって……」

「これって……あの時の……」


 生徒たちがもしかしてと言いながら周囲を見渡していると、駅の直情の空が割れてそこから怪物が数体現れた。


「か、怪物だー! 逃げろー!」

「いやぁー!」


 駅前が阿鼻驚嘆の渦に包まれると、生徒たちは学校を目指して走っていた。出雲はその生徒たちが走る姿を見ていると、急いで逃げないとと学校へ向かった。


「俺も学校に逃げないと!」


 出雲は走り出すと、駅の方面で爆発音が聞こえた。校門前で立ち止まって背後を振り向くと、1体の怪物が目の前に振ってきた。その怪物はライブ会場にいた怪物と同じであり、その時とは別の仮面を付けていた。上半身が裸であるも、両腕が錆びている刀に変化をしているようであった。


「な、何でここに!? さっきの爆発か!?」


 出雲は目の前に迫る怪物に通学鞄をぶつけて校門内に入ろうとする。しかし、怪物が出雲の腹部を蹴り飛ばして校内に入れなかった。


「ぐはぁ!?」


 出雲は地面を数回転がってゆっくり立ち上がると、あの時の剣があればと思った。しかし、琴音に危ない真似はしないでと言われているからできないと呟く。すると、駅の方から黒い特殊な装備を付けて左腕に特殊災害対策室と書かれている腕章を付けていた。


「大和さんのところの人たちだ」


 出雲は来てくれていたんだと喜んでいると、その腕章を付けている人たちが持っている銃で怪物を攻撃し始めた。出雲はその攻撃を見ながら投げつけた通学鞄を拾って校内に入っていく。


「凄い銃の音だ……あれぐらいしないと勝てないのか……」


 出雲が怪物との戦闘の激しさを感じていると、美桜が刀だけで戦っている凄さを思い知った。


「大人が何人もいて怪物1体を倒すのに、美桜は1人で何体もの怪物を倒しているのか……」


 凄いなと思いながら、美桜との差を感じていた。どうして逃げているのか。どうして逃げなければならないのか。どうして戦う力がないのか。どうしてなのかとの想いが頭の中で巡りながら学校内に入った。


「はぁ……はぁ……やっと学校に入れた……ここまでも銃声が聞こえる……」


 出雲は本校舎の入り口前で膝に手を置いて息を整えていた。入り口前には地面に座ったり、泣いている生徒たちが多数いた。


「怖いよぉ……あれが怪物なの……」

「飛んできたコンクリートで腕が……」


 出雲の側にいた知らない男子生徒が、左腕を怪我したようであった。服に血が染みつく程に出血をしているようで、制服にまで染み付いていた。


「だ、大丈夫ですか!?」

「痛いけど、大丈夫……我慢はできるよ……」


 脂汗を書いている男子性とは、次第に息が荒くなっていた。その顔を見た出雲は、教師がいないか辺りを見渡した。


「先生! 誰かいませんか!? 先生!」


 出雲が声を上げて誰かいないか叫ぶと、星空学園の敷地内の右側にある講堂の方から数名の教師が走ってきた。教師は出雲を見ると、大丈夫かと声をかけてきた。


「先生! 腕を怪我しているようで! 早く助けてください!」

「分かった! 君は一度講堂に避難をするんだ!」


 出雲は言われた通りに講堂の方に向かうと、怪我をしている生徒たちが多いようであった。出雲は怪我をしていないが、頭部から血を流している生徒や、頬に青あざが出来ている生徒など多数いた。


 講堂は全校生徒が入れる大きさに作られており、全生徒分の椅子が作られている。木造作りであるが、内装は綺麗に整えられている。長方形の作りである。


「みんな辛そうだ……怪物が現れるだけでこんなことになるなんて、ライブ会場の時の惨状がいつでも起きるんだな……」


 苦しいや痛いなど多くの生徒が言葉にしており、出雲はたまたま怪我をしなかったんだなと感じていた。そして、講堂に入ってから1時間程度が経過すると、一人の男性教師が講堂の奥にある壇上に現れた。


「全員いるか!? いる前提で話すぞ! もし友達がいなかった、今から言う話を話すこと! いいな!」


 壇上に焦りながら登壇した男性教師が慌てながら説明を始める。


「学校の周辺で怪物が出現したのはもう分かってるな? それによって生徒や学校への被害が多大に生じた。怪我をした生徒が多いので、救急車を呼んだりもしている」


 怪我をしている生徒たちの中には、早く助けてと痛みを堪えながら何度も呟いている女子生徒がいる。出雲は痛いと言っている生徒たちの声を聞きつつも、壇上にいる男性教師の説明を静かに聞いていた。


「既に国の特殊部隊によって、外に出現をした怪物は討伐されたと聞いている。怪我をしている生徒から外に出てもらい、校門の外に来ている救急車に乗ってもらう。軽傷の生徒は教師の車に乗って病院に連れて行く」


 出雲はその説明を聞いて、怪我をした生徒が多いんだなと感じていた。確かに講堂にいる出雲以外の生徒たちは怪我をしている生徒が多く、怪我をしていない生徒の方が少ないようであった。


「それと当分の間だが、学校を休校とすることが決まった。校舎にも被害が出ており、怪我を負ってしまった生徒達が多いので一度休校という選択をさせてもらう」

「休校になるのか……もっと早く怪物を倒せていたらこんなことにはならなかったのかな……」


 出雲が自己嫌悪に陥っていると、教師たちが壇上に複数人現れて生徒たちに指示を出し始める。

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