第5話 お見舞い
「お兄ちゃん怪物に吹き飛ばされたの!? ていうか、テレビには怪物の姿は映ってなかったけどどういう姿をしてたの!?」
琴音が出雲の眼前に迫って、怪物の姿を聞き出そうとしていた。出雲はどこまで言っていいのか分からなかったが、怪物の特徴を言うことにした。
「黒い甲冑を着た武士のような怪物や、甲冑ほどじゃないけど何か防具のようなものを着ている顔全体を覆っている装飾の付いている仮面を付けている怪物が多かったかな」
「甲冑!? 武士!? なにそれ!? 凄い!」
琴音は怪物のことを教えてもらうと、凄いと連呼をしていた。出雲は何が凄いのか理解ができていなかったが、琴音が喜んでいるのでよしとした。
「未知の世界からの侵略者だよ! それに姿が日本の武士と似ている姿なんて凄すぎるわ!」
「でも、実際目の当たりにすると怖いよ? みんな逃げてたし、殺された人もいるから」
「そ、そうだよね……テンション上がってたけど殺された人もいるんだよね? ごめんなさい……」
「落ち込むことはないよ。空の空間が割れて振ってきたから、別の世界の侵略者かもしれないね」
出雲がそう言うと、楓がそんな話はあとにしてと言った。
「明日には退院できるって聞いたから、今はゆっくりやすみなさい。ちょうど明日は日曜日だし、ゆっくり家でも休んで元気に学校に行きましょうね」
「うん、そうだね。心配かけてごめん」
「また首突っ込んで巻き込まれたんじゃない? ほどほどにしてねお兄ちゃん」
琴音に首を突っ込んでと言われた出雲は、右頬を軽く掻いて気を付けるよと返した。出雲はおにぎりを食べ終えると、楓と琴音と3人で談笑をしていた。楓がテレビ番組のことを話し、琴音が学校での友達のことを話している。出雲はその話を聞いて数時間前にいた状況が信じられなかった。
あの怪物は本当にいたのか。あの怪物に吹き飛ばされたのか。実際は車に跳ね飛ばされたのではないか。多くの考えが巡っていると、琴音がいつの間にか電源を入れていたテレビに映っているニュース番組が緊急速報とテロップを入れていた。
「お兄ちゃん緊急速報だって! なんだろう?」
「もしかして、またなの?」
楓と琴音が不安そうな顔でニュース番組を見ていると、怪物が出現したという内容であった。規模は出雲がいたライブ会場に出現した数ほどではないが、それでも数十体出現したようである。
怪物は地方都市に出現をしたようで、国の特殊部隊によって討伐されたとアナウンサーが伝えている。出雲は特殊部隊と聞いて、大和たちであろうと察した。
「出現したけど、倒されたみたいだね。よかった……」
「そうだけど、いつどこに出現するか分からないのが怖いわ」
「私も学校に出たらと思うと、不安……」
楓と琴音が不安だと言っていると、出雲が大丈夫だよと言う。
「何が大丈夫なの?」
「さっきも特殊部隊って言ってたし、国の特殊部隊が倒してくれるよ」
笑顔で言う出雲に、楓と琴音が危なかったら逃げてねと声をハモらせながら言っていた。
「ありがとう。あ、そろそろ帰らなくていいの?」
「そうね。もうこんな時間だわ」
「お兄ちゃんが元気そうでよかった! ゆっくり休んでね!」
「ありがとう!」
出雲が笑顔で手を振ると、楓と琴音は病室から出て行った。二人が帰った後の病室はとても静かであり、一人でいると寂しい気持ちになっていた。
「二人が帰ったら静かになったな。今更ながらよく怪物に立ち向かったな……あの子にあったら謝らないとな」
出雲はベットに付いているボタンを押して、部屋の電気を押した。そして謝らないとと思いながら目を瞑って眠ることにした。すぐには眠れないと思っていた出雲だったのだが、以外にもすんなり眠ることができていた。翌朝、看護師に起こされるまで眠り続けていたので、起きた際に熟睡をしていたのかと軽く驚いていた。
「朝食を食べたら退院ですよ。お忘れ物がないようにお気をつけ下さい」
「ありがとうございます」
お礼を言った出雲は、出された朝食を食べていく。量が少ないのですぐに食べ終えた出雲は、楓が持ってきてくれていた服に着替える。その際に忘れ物がないか確認をし、病室のベットに座って時間が来るのを待った。
「時間かな。ロビーに行くか」
病室から出てロビーに行くと、ちょうど楓が病院に入って来たところであった。出雲は楓を見つけると、小走りで駆け寄って来てくれたんだと言った。
「入院費とかあるからね。私が持ってきた小さな鞄はある?」
「あっ! 部屋に忘れた! すぐに取って来る!」
出雲はそう言うと、部屋に忘れてしまった服が入っていた鞄を取りに戻った。部屋に戻ると、ベットの上に紅がくれた書類がも忘れていたので、鞄の中に入れて楓のもとに戻った。
「お待たせ。お金は払った?」
「それが国がお金を払ったって言われたのよ。怪物の被害に遭った人は国が払ってくれたのかな?」
「それは分からないけど、払ってくれたならよかったね」
「なんか釈然としないわ」
楓がモヤモヤとしていると、出雲は大和たちなのかなと考えていた。出雲は楓に終わったのなら帰ろうと言った。
「そうね。帰りましょうか」
楓のその言葉を聞いた出雲は二人で並びながら病院を出た。出雲はお昼時に家に到着をすると、1日しか経過をしていないのだが、とても懐かしい気持ちになっていた。
「ただいま!」
玄関の扉を開けて出雲がただいまと言うと、その言葉を聞いた楓はお帰りと笑顔を向けた。出雲のその声を聞いたのか、ドタドタと足音を立てて階段を下りてくる音が聞こえてくる。
「お帰りお兄ちゃん! 退院おめでとう!」
「ありがとう琴音。心配かけてごめんな!」
出雲がごめんなと言うと、琴音は出雲に抱き着いた。身長差があるので琴音の頭部が出雲の戻元に当たり、少しくすぐったいと出雲は感じていた。
「髪の毛でくすぐったいよ。そんなに抱き着かなくてもいなくならないからね」
「うん……だけど、もう危ないことはしないでね」
「約束するよ」
その言葉を聞いた琴音は出雲から離れると、楓が琴音に昼食を作れたのと聞いていた。
「作れますとも! ちゃんとサンドイッチ作ったわ!」
「楽しみだなー」
「あれ成功したの?」
出雲が楽しみだと言うと、楓が琴音に成功したのねと聞いた。出雲は成功とはと思い琴音に聞いてみることにした。
「成功って、なにかあったの?」
「そ、それは……」
琴音が頬を軽く掻いていると、楓が斜めに切れなかったのよねと微笑しながら出雲に説明をした。その説明を聞いた出雲は、琴音の髪を優しく撫でた。
「上手く切れてなくても、作ってくれたんだから嬉しいよ。ありがとう」
「お兄ちゃん……せっかく作ったんだからちゃんと食べてよね!」
「おう!」
玄関口にいた3人は、そんな話をしながらリビングに移動をした。一軒家の出雲の家は2階部分がリビングとダイニングになっているため、3人はそこで食事をとっている。出雲は席に座ると、すぐに食べ始めた。
「美味しいじゃん! 琴音は料理が上手!」
「ほ、本当!? ありがとう!」
出雲は琴音が作ってくれた様々な種類のサンドイッチを食べていた。途中、出雲は楓と琴音と楽しく話して食べていた。
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