第2話 見覚えのない言葉を見ると条件反射にページ閉じがちなもうすぐアラサーになる奴の話

「これ作品に罪はないと思ってるんだけど、その作品独自のワードが最近あっさり飲み込めなくなった」


 俺のぼやきに啓馬の方は思い当たる節があるのか遠い目をしながら、うんうんと頷いている。

「ゲームのカメラとかコントローラーとか……仕組み変わった瞬間に受け入れる事が出来なくなると歳感じるよな」

「説明少なくしてくれーーーー!!!!!!!! って叫びたくなる時が多くなって、テンプレが流行るのってアレ『皆がもう知ってる設定を使い回してるから』ってのデカイんだろうなと最近思う。もう買う気はそんなに起きないけど」

「ライトノベル買うのって今だと大体30代だから……当事者だから言えるけど、もう色々と覚えるのキツくなる歳だよな。若い人はそもそも漫画買ってるイメージ強いし」

「嫌だぁ、実感したくない……!!」

「諦めろよそこら辺は。痛々しいくらい精神年齢が育たないままおっさんになってんだから」

「事実として受け入れ難いんだよなぁ……それ……」


「それにしても独自ワードでつまづくって、どういう感じなんだ?」

「せめて知ってる話から段々馴染む形でならいいかなと思うんだけど、いきなり説明ワード連打されるともうキツイなーって感じてしまうんだよな。だから俺のとこの小説も大体もう他所で使われてる言葉が多くて、独自要素あっても説明とか後から分かる形にしておきたいし。最初はとりあえず言葉だけ出して、1回で分かるようにはしておかないで若干放置気味に置くんだけど。それでも説明し過ぎてるかなと思う時はあるし」

「どっちにしろ、読む側としちゃ世界観からじっくり馴染むようにして貰った方がお前的にはありがたいって話だな……具体的にどういう例にすると分かり易いんだろうな?」


「まず、海は皆知ってるだろ?」

「そうだな」

「アサリとかシジミとかになると、知らない人も居るけど、まだ知ってる人が多いだろ?」

「まぁ、そうだな?」

「でもリュウグウノツカイとかダイオウグソクムシとかになると、某スローライフゲームやってる人じゃないと……まぁ馴染みがないだろ?」

「偏見くさいけど、なんとなくは分かる。普段見ない生き物だしな」

「そのスローライフゲーム前提みたいな説明文がいきなり出て来る感じ?」

「分かるような分からんような……」

「要するに海とかアサリとかシジミとかの段階すっ飛ばしてマイナーな生き物を持って来られてる気がするというか……まぁ個人的な感想だけど」

「あー……だから一人称視点というか、転生系にありがちなスタイルって受けるのかもな。あれって一般人目線だし。主人公の過去って大体1ページ目には終わってるもんな?」

「そうだなぁ、脳みそ空っぽにして読んでも最初は全然オッケーなタイプは売れる気がするな。でも最近のというか、最強の奴が追放とか最強の奴が生まれ変わってる系は違う気もするけど。アレ結構説明文が目立たないか?」

「あぁいう系は読まないからなぁ、漫画は知ってるけど小説はどうなんだろうな?」

「あり過ぎてどれ読めばいいか分からないから何も読んでないというな」

「けどありきたりな設定ならそこら辺にいくらでも転がってね? って無視されそうだけどな」

「小説って表紙ない状態が普通だし、そこはまず興味引くワードとかで読んで貰える事が大事だったりするんじゃないかな……まぁ、ここら辺は上手く言えないんだけどな」

「長文タイトルが流行るのも、まず目に付けて貰える文字がタイトルって部分も大きいからな」

「前も話したけど、あれはあれでデメリットあると思うぞ。たぶん後々それも書くとは思うけど」


「まぁとりあえず、お前にとって新しい世界を見るのは辛いなんだな」

「すまねぇ……すまねぇ……中々脳の処理速度が追い付かなくてすまねぇ……」

「自分の世界観の構築はウキウキ出来るのにそこら辺は柔軟に対応出来ないの、最近おっさん化が加速してる証拠だと思うぞ」

「正直、それなら漫画の処理スピードの速さを選んじゃうんだよな……」

「作家目指す奴がそれでいいの?」

「漫画のスピードには勝てねぇと思ってるしなぁ。作家は読者の想像力をどこまで育てるかだし……」

「なのにタイトル通りの反射的にページ閉じるマンになって恥ずかしくないんかお前は?」

「マジで申し訳ない」


「今思うと『キノの旅』とかも世界観の説明はその時に寄った国の話くらいで、後は結構置いてきぼりな雰囲気あったから、するする世界観に入り込めたんかなって思う部分も多いな」

「バイクが空を飛ぶ云々とか、一瞬『えっ?』ってなるもんなアレ」

「世界観の構築とか、没入感持たせるのって難しいなぁ……」

「まぁ、そこら辺も要勉強って感じだな」

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