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 草子の倒れていた地面のすぐ近くの場所には、草子の愛用している白いリュックサックが落ちていた。(それが自分の荷物であると、一目で草子にはわかった)

 リュックサックの中にどんな荷物が入っているのか、それを確かめるために、その白いリュックサックに手を伸ばそうとしたときに、草子は自分の右手がぎゅっと閉じられていて、その右手のひらの中に、自分が『なにか』をしっかりと握りしめていることに気がついた。

(……眠っている間、あるいは気を失っている間かもしれないけれど、私が、ぎゅっと無意識に握りしめていたもの。それは、……つまり、この握りしめているものが、私にとって『とても大切なもの』だということだろうか?)

 草子の頭の中にその握りしめているものの記憶はなかったのだけれど、それを確かめてみることは簡単だった。手を開けばいいだけだ。草子はそっと、自分の右の手のひらをゆっくりと開いてみた。

 すると、そこには、『白い花』があった。

 綺麗な白色をした、(水気を帯びているのか、少し輝いて見える)小さな白い花だった。

 ……これはなんだろう? すごく綺麗な花だし、……もしかして、お守りかな?

 あるいはお守りではなくても私にとってすごく大切なものなのかもしれないな。


 だから私は、この白い花を無くさないように、ぎゅっと自分の右手の中に握っていたんだ、と草子はそう思った。(記憶はなかったけど、その考えはとても正しいことに思えた。その証拠のように、草子はその白い花からさっきからずっと目をそらすことができなくなった)

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