11 第二章 とくん、とくん、と君の音が聞こえる。

 とくん、とくん、と君の音が聞こえる。


 第二章


 お化けの森


 あなたと出会ったとき、私は本当に驚いた。


 草子が目をさますと、そこは深い森の中だった。見たこともない、深い森の中。その緑色の木々に囲まれた草の生える焦げ茶色の大地の上に、叶は一人で眠るようにして倒れていた。

 ……ここは、どこだろう?

 目を覚ました草子は、上半身だけ体を起こすと、ぼんやりとする頭を軽く左右に振ってから、周囲の様子を観察してみた。

 すると、そこにあるのは森の木々だけだった。

 緑色の葉を茂られせている、ずっと続いている森の木々。そんな風景が叶の周囲には永遠と広がっているだけだった。

 大地を観察してみても、地面の上には道もない。それだけではなくて、自分がここまで歩いてきた足跡、あるいは移動をしてきた痕跡のようなものもどこにも見当たらなかった。

 草子がそんな風景を見てぼんやりとしていると、空の上で、鳥が小さな声で鳴いた。

 ……私はどうしてこんなところにいるんだろう? どうやって私はこの場所までやってきたんだろうか?

 草子はそんなことを考えてみる。でも『なにも思い出せない』。

 ……うん? あれ? おかしいな。えっと、私は……。

 そうやって自分の頭の中にある様々な記憶をたどってみる。でも、その道筋はどれも行き止まりばっかりだった。

 草子は、やっぱり『なにも、自分の過去が思い出せなかった』。

 草子が覚えているのは、朝露草子と言う自分の名前と、自分がどこかの中学校に通っている現役の十三歳の中学生であるということだけだった。

 それ以外はなにも思い出せない。

 ただ、幸いなことにこんな状況でも、『記憶はなくても、生きるための知識はちゃんと草子の頭の中に残っていた』。

 これからとりあえず森の中を移動したり、あるいはこの場所で助けを待つためにしばらくの間生活するとしても、とにかく、この場所で、生きていくために必要な知識は、ちゃんと草子の中に残っていた。(草子は、すごくほっとした)

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