10
雪が降っている。
真っ白な雪。
降り続く雪に覆われて、やがて世界は真っ白になった。
草子は思わず足を滑らせてしまった。
「あ」
と言ったときにはもう遅かった。
暗い夜の中で草子は自分の足元に空いていた『大きな空洞』の中に落ちていった。
落ちる。
……とても高い。
どうしてこんなところに大きな穴が会いているんだろう?
この高さから落ちたら、私は助からないかもしれない。
もし助かっても、足を怪我してもう一歩も動けなくなってしまうかもしれない。
そうしたら、もう夕子ちゃんに会えないかもしれない。
そうしたらどうしよう?
はってでも、会いに行こうか?
大地の上を。
まるで、……蛇のように。
大地の上に落っこちるまでの間、その恐怖で気を失うまでの間に、草子はそんなことを考えていた。
夕子ちゃん。
……どこにいるの?
寂しいよ。
苦しいよ。
……ひとりぼっちはもういやなんだよ。
草子は泣いている。
泣いている草子は、そのまま大地の上に落っこちた。
不思議と大怪我などはしなかった。(本来なら命すら助からないくらいの高さから草子は落下した)
でも、その代償として草子は『記憶』を失った。
記憶を、『大切な人の思い出』を丸ごと全部失ってしまった。
そして次に草子が目を覚ますと、そこは見たこともない、とても深い森の奥だった。
第一章 終わり
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