3
草子はずっと背負っていた小さな黄色いリュックサックを地面の上に置くと自分も洞窟の入り口のところの外の光がかろうじてまだ差し込んでいる場所に体育座りをして座り込んだ。
ずっと歩きっぱなしだったからすごく気持ちがいい。
草子は全身に(とくに森の中を歩くことに全然慣れていない、細くて白くて華奢な自分の両足に)疲れを感じた。
草子は顔を自分の両手の中に埋めて目をつぶった。
草子はその場所でなにをするわけでもなくしばらくの間、ぼんやりと静かな森の中に降る雨の音を聞いていた。
草子はかすかに眠気を感じた。
……危ない危ない。このままだと、このままここで夜まで眠っちゃうかもしれないな。
そんなことをぼんやりとする意識の中で草子は思った。
でも、それからすぐに(眠りにつくことなく)草子の意識は急激に覚醒する。
それはその暗い洞窟の奥にいる、『得体の知れないなにものかの気配』を確かに草子が感じ取ったからだった。
はっと顔をあげた草子は真っ暗な洞窟の奥に目を向ける。
でもそこにはただの『暗い闇』があるだけだった。(得体の知れないなにものかの姿はどこにも見えなかった)
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