421話 まとまりのない者たち
「……集まりが悪すぎる」
「しょうがないよ。みんなぼくが呼んでも聞かないし、アリスはそもそも来れる状態でもなかったし」
「その話は、後で聞く」
紫の少女が澄ました顔で不満を述べると、エリアガルド、もといリアはため息を漏らしながら答える。
ロッジはアルトリンデの霊峰にあるとはいえ、ジンの能力があれば惑星1つも裏庭のようなものだ。それでもジンの集合命令に従わないのは、何かしら優越するほどの事情があるか、それとも従う気がないかのどちらかだ。
現在、ロッジには紫の少女やリアを除けば、後は招集を希望した本人であるパラミティーズしかいない。存命のジンが合計で10名しかいない中、3名しかいないというのは致命的だろう。
だが、パロムは全く気にしていないようで、飄々と続ける。
「聞いてくれない人たちは放っておいてもいいと思うけどね。うちは1人でもやれるからね」
「そういうわけにもいかない。今は重要な時」
「それはわかるけど、うちが集合を希望したのはあくまで強引に関与に持って行かせるためで、別にみんなが集まることを希望しちゃいなかったんだよね」
「それとこれとは、話が別。私が招集命令を発してもこれなら、有事の時が不安」
少女は硬い表情を崩しておらず、あくまで招集命令の無視にこだわり続けていた。まるで、そちらの方が重要な議題と言わんばかりに。
そもそも、ジンはメンツが濃い者ばかりが集まっている。というより、生き残っているジンたちが濃い顔ぶれになってしまったと言った方がいい。そんな連中が素直に招集命令に従ってくれるなど露ほども思っていなかったパロムにとっては極めてどうでもいいことだったのだが、彼女にとっては違うらしい。
「あなたがどう思おうとも、有事の際にジンを統率するのは私。どうせなら、エリアガルドが押し付けられればよかった」
「ぼくには無理だよ……もうルイナに何か言われるのは嫌なのに……」
「私も一緒。あれはとんだ暴れ馬」
「あははは、だよねぇ……」
リアが半泣きの状態で笑うと、少女はじっとリアに目線を合わせながら愚痴を漏らした。
結局、ルイナはジンの生み出された目的通り世界の平和を願っているのか、それとも世界を壊したがっているのか、彼らにさえよくわかっていない。
もはや本来の議題であるレン帝国への介入など、ほとんど宙に浮いてしまっていた。普段のことながらパロムが呆れていると、この場にいたジンたちが一斉に強い魔力の波動をキャッチする。
「……噂をすれば、何とやら」
「うえっ!?」
リアが不意のことに驚いていると、何者かがロッジの屋根を突き破って中央に置かれたちゃぶ台に着地。もちろん衝撃に耐えられなかったちゃぶ台は真っ二つに破壊されてしまう。
「ごめんあそばせ。わたくしのウワサをされていらっしゃる不届き者たちが存在している気がいたしましたので、可及的速やかに馳せ参じました次第でございます」
「最初から来ればよかった。それより、机を弁償して」
「お断りさせていただきますわ。レイリ様が頑丈な机や屋根を調達なさっていなかったことが、今回の事故の原因でございますから」
「責任の押し付け。話にならない」
ルイナが展開する身勝手すぎる論理に、少女は完全に呆れかえっていた。ちゃぶ台はどう見てもかなり古く傷だらけの代物だったが、どうやら彼女のお気に入りだったらしい。
だが、ルイナは全く気にする様子がない。それよりも、伝えるべき話があったようだ。
「決着がついた話題よりも、大事な話がございます。レン帝国のミンシェイ諸島でルウカ様にお会いいたしましたわ」
「ルウカに? へぇ、珍しいね」
ルイナが得意げに話すと、少女はちゃぶ台からルイナの顔に目をやり、リアも感嘆の声を漏らす。
「ご挨拶にでもとお伺いしたところ、難破した地球産の船を探索されておられたようでしたわ」
「地球の船? まさか、まだあったのかい?」
「そうでございますわ。ルウカ様は能力を使用し地球人の死者から話を聞いて、船名や残された資料の情報を少しばかり得ておられました」
「それ、ジエイタイの船なの」
少女はルイナに聞くと、彼女は珍しくニコリと微笑み、素直に白状する。
「いいえ、違うようでございます。灰色の船の所属先というニホンの船ではなく、話を聞かれたという地球人の死者も、別の国から来たのだと話しておられました」
「そう……船名は何、どこの所属」
「そうでございますね……確か、アン・サン1号という名前でございます。所属はプッカンという国だったかと」
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