小話【悪党式コロナ対策の方法】
その一、こまめな手洗いうがい。
「貴方は神を信じますか?」
「外出してまで宗教勧誘してんじゃねーですよ、地獄に堕ちろ」
ピンポン連打をしてきたので渋々扉を開けたら、頭のおかしな男から宗教の勧誘を受けた。
リヴは拳で宗教勧誘をしてきた男の鼻っ面を殴り、舌打ちをしながら倒れ込んだ男の服で手を拭う。殴ってしまったので、あとで消毒もしなければならないか。
起き上がろうとした男の頭を踏み潰しながら、リヴは言う。
「他人を殴ったら手洗いとうがい、それから消毒を忘れないようにしましょうね。真っ黒てるてる坊主の僕と約束しましょう」
――もし破ったら、分かっているでしょう?
☆
その二、不要不急の外出。
「あ、出てきた」
窓から外を眺めていたユーシアは、純白の対物狙撃銃を手繰り寄せる。
目標は向かいのマンションに住む男だ。
情報によれば、彼は詐欺と強盗でかなりの金を貯め込んでいるらしい。そんな相手からは強奪してしまうのが一番だ。
「はい、さよなら」
狙撃銃であれば十分に狙える距離である。家の中からでも、十分に。
タァン、という抑えられた銃声が室内に落ち、射出された弾丸が的確に目標の眉間を撃ち抜く。目標の男には怪我一つなく、膝から崩れ落ちて永遠の眠りに誘われた。
目標が永遠に起きない眠りについたことを確認して、ユーシアは言う。
「狙撃手なら家でも十分に他人を殺せるからね。外出しないでも殺せる手段があってよかったぁ」
そもそも他人を殺すという行動こそ間違いであるが、彼らには通用しない。
☆
その三、他人と話す時は距離を取って、マスクをしよう。
「だから言ってるだろ、オレの煙草は二五番なんだよォ!!」
コンビニへ行くと、腹が突き出た中年の男がマスクもしないで店員に怒鳴り散らしていた。当然ながら、彼の後ろには長蛇の列が形成されている。
中年の後ろに並ぶ客は全員マスクを装着していて、十分に感染対策をしていた。だが、中年は相手が感染しようがお構いなしに、マスクもしないで唾を飛ばしながら店員を怒鳴りつける。
その様子を、ちょうど店へ足を踏み入れたユーシアは目撃することとなり、
「ちょ、本当にうるさい。あと唾飛ばさないでよ、汚いな。俺もおっさんの自覚はあるけど、おっさんに唾飛ばされることほど嫌なものはないよ」
「ぶげえッ」
ユーシアは中年の後頭部を掴んで、レジカウンターに顔面を叩きつける。
二度、三度とカウンターへ顔面を叩きつけられて気絶を果たした中年の首根っこを引っ掴み、ユーシアは外で待機していたペスト医師っぽい格好をした相棒の青年へおっさんを引き渡す。
「ペスト医師さん、手術してやって」
「医師免許持ってないですけど、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫でしょ。闇医者のほとんどは医師免許なしでやってるし」
ペストマスクを装備したてるてる坊主は、気絶した中年を引きずってどこかへ消える。
相棒の姿を見送ったユーシアは、やれやれと肩を竦めながら煙草を購入する為に列へ並んだ。
☆
その四、ソーシャルディスタンスを守って。
「おら、おっさん。有り金全部置いて行けやぁ!!」
「ちょっと飛んでみろよコラぁ!!」
典型的なチンピラに絡まれている最中のユーシアとリヴは、揃ってため息を吐いた。
「ソーシャルディスタンスを知らないんですかね」
「唾飛んでくるし、本当に汚い。リヴ君、殺しちゃっていいよ」
「了解です」
距離を詰めてくるチンピラの眼球に人差し指と中指を突き刺して潰し、悲鳴を上げたところで袖から滑り落としたナイフで喉を切り裂く。
ソーシャルディスタンスを無視して金をせびってくる命知らずな連中を強制的にこの世から退場させたリヴは、一仕事終えたとばかりに額の汗を拭って清々しい笑みを浮かべた。
「これで対策はバッチリですね」
「リヴ君、帰ったらシャワー浴びてね」
自分に出来る対策を取って、新型コロナの感染を予防しましょう。
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