25話 誓願
「なんだよそれ、当主なのに知ってはいけない掟なんて存在するのか?」
「その当主には知らせてはいけない掟を、俺に話すって事は、俺は既に当主では無いってことか」
「左様でございます。正確に言えば当主は
「ハッ?ふざけんなよ!アキは
「そう言われましても…。一族の総会で決まったことですので…」
「そんな重要な話を俺抜きで決めたのか?」
「それは…」
それが分からない
当主命令が絶対で
もしかしたら
あれこれ
「
「心中お察しって、キミに何が分かる!」
喪失感に押し殺されないよう冷静に努めていた
そんな彼女の様子を見て
「怒鳴ってすまない。
「いえ、私こそ配慮が足らずに申し訳ございません」
「話の腰を折ってすまない。続きを話してくれ」
「はい。本家の長子は母体から生まれ落ちた時点で、親から
「それなら、俺は生まれた時には既に当主だったのか…。どうしてこの事は当主に話してはいけないんだ?」
「
「歴代の御当主様には
「でも、仮に
「そうですね。そこで、“
「せいがんって?」
「
「なるほど…。けど、当主に秘密にする程度の代償で、
「いいえ、気休め程度の結界かと思われます。現に
「その…
「そうですね…。
「なるほど…よくわかったよ。ありがとう」
「気付けば、こんな時間ですね。今から夕食をご用意を致します。それまで休まれて下さい」
「
その言葉を受け、
「私はもう19歳ですから」
それだけいい放つと、彼女はそのまま部屋から出て
「マジか、…てっきり中学生ぐらいだと思った…。後で謝っておいた方がいいかな」
「……」
誰もいない客間で、
後日、
本棚には分厚い書籍が敷き詰められていた。
おもむろに、それを手に取って開く。そこには、漢字だけの文章がズラリと並んでいる。
漢文の授業をまともに受けていない
「埃を被ってない。手入れが行き届いているな」
これだけで、
「俺って父上の事、何も知らなかったんだな」
「もう少し、父上と話をしていれば、ここまで関係が
今更、後悔しても、どうにもならないことは、
それでも、アキと父親を喪うという最悪の事態は避けられたかもしれないと思うと、やりきれない気持ちになる。
後悔の念に駆られながら、何気なく本棚を眺めていると、他の本に比べ、くたびれている黒い冊子が目についた。
「これは…父上の日記か?」
そこには筆で書かれた達筆な文字で、日記が記されていた。
3月25日。一族の総会で
当主として愚息の愚行の責任を取らねば。
3月26日。一族の当主になった時点で私的な感情は捨てた。息子の処刑を決定しなければ、分家の不満も高まり、一族が内部分裂する恐れもある。崇める神を失えば、これを躍起に謀反を起こす者も現れるやもしれん。普通の家に生まれれば、息子との関係もここまで
日記はここで途切れていた。
父である
「一族ってなんだ!そんなに大事なものなのかよ。家族を犠牲にしてまで存続させる価値ないんたないだろ!」
本来の目的であった
湖の中央まで桟橋が伸びており、そこには黒い布切れを羽織った老婆が、水面に手をかざしていた 。
水面からは、水の球が浮かび上がっており、その中で
「
老婆は、水球へかざした手はそのままに、
「これはこれは、
「
「そうですじゃ。ワシの
程なくして水球から解放された
「
そして、分家の思惑を回避する為に、
…数日後、分家の取り計らいもあり、
その場には当主である
「本日は私の為に、このような場を設けていただきありがとうございます。突然ですが、この場をお借りして今後の一族の方針を発表します」
「本日を持ちまして
「異論のある方は当主代行の権限で一族から追放します。それでも納得がいかない方は俺が力づくで追い出します。その場合は命の保障はしかねますのでご了承下さい」
そして
ただ、
しかし、
当然、納得出来ない分家の者もいたが、ことごとく
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