20話 運命の歯車
海斗は産まれた子どもに
子どもには一族のしがらみなど気にせず生きてほしいと願いつつも水の名を刻んだ方が
海斗とアキ、息子の水姫はささやかながらも幸せな日々を送っていた。
そんなある日、郡山家から一通の手紙が届く。
文面には海斗を正式な当主として迎えアキを正妻に据えるとの旨が記載されていた。
その為の、成人の義と挙式を郡山家で盛大に執り行いたいとの事。
アキは家族が仲直りするチャンスなんだからと喜んでいるが、海斗は何となく嫌な予感がしていた。
ただ、海斗自身もどこかで父である
郡山家総本山の参道を海斗たちは休憩を挟みつつ登っていた。
「カイト、凄いね。いつもこんな険しい山道を登り降りしてたなんて」
アキは水姫を抱えながら感心していた。
海斗はアキに干渉力については話していない。
郡山家に嫁ぐのであればいずれは話さなければならないことだが一般人に干渉力の説明をして理解させるにはハードルが高いため先送りにしていた。
「山登りがきついんならおんぶでもしてやうろか?そしたらアキの体も触り放題だからな」
「もうカイトったら。お父さんになったんだから少しは自重なさい。教育上よくないよ」
「これでも自重してる方なんだけどな」
アキは海斗と結婚してから性格が丸くなった。二人が喧嘩することも殆ど無いくらいだ。
そんなやり取りをしながらも参道を進んでいると、
「アキ止まれ」
アキも
「おい!そこの3人それで隠れているつもりか」
「よく分かりましたね。さすがは
「お前ら馬鹿だろ。
「なに!この人たち」
アキは怯えながら
「アキ大丈夫だよ!俺が付いてる」
「お前ら父上の手の者か?」
3人組は
刺客は正面、左右に展開し、同時に刃を振るう。
全ての小太刀の刀身は折れ、折れた刃が頭上へと跳ね上がる。刺客たちは
勢いよく吹き飛ばされた刺客たちは木々に激突した。
「動きは鋭いし連携も悪くないんだが…相手が悪かったな。俺は最強なんだよ」
アキは状況が飲み込めず困惑していた。
刺客は1人だけ意識があり呻き声を上げていた。
「もう一度聞く。父上の指示か」
「そうだ」
刺客が答えると、そいつの顔を覆っていたお面が地面に落ちた。
驚く事にそこには、
「お前は…、
「オウミくん…」
「久しぶりだねアキ、
「嬉しいよ。
目の前の旧友は、
「どうしてお前が…、村から出て行ったって」
「そうだね、理由を知らないのも可哀想だから、説明してあげるよ」
「僕は中学を卒業してすぐに、母さんが亡くなったんだよ。しかも病に伏した死に際にとんでもない事実を明かされた」
「母さんは僕の実の母親ではなかったんだよ。
「
「僕の本名は
「まさか何気なく仲良くしていた相手が、自分を捨てた家の実の兄だったなんて…とんだ笑い話しだよ」
一族という枠組みにこだわる御三家は、双子は跡目争いの種にもなり、集約される
「でも別に僕はそんな事を恨んじゃいないし、始めはそんな話を信じてなかった」
「でも…母さんが亡くなってから、僕は隣町の工場で勤めだした。そこで酷いイジメに合ってね。ある日、とうとう我慢の限界がきて、気がついたら僕はいじめていた上司、同僚を病院送りにしていた」
「その時、自分の中に眠っていた
「途方に暮れていた僕にある名案が浮かんだ。自分が本当に
「ところが、
「そして、僕を棄てた父は僕が
「別に僕は父の事を恨んでないし、母との生活はそれなりに幸せだった」
「今、僕が恨んでいるのは
唐突に明かされた、親友の過去に
「いったい何で…どうしてだよ!俺たち親友だし、父上の言うことが本当なら血を分けた兄弟だろ?」
「そうだよ。キミは僕が欲しいものを全て手に入れていた。僕が産まれながらに奪われた当主の座を呆気なく蹴って、挙げ句のはてにアキまで奪った!」
「まさかお前もアキの事か…」
「そもそも僕の片想いだったし、アキが
「ただね、これだとあんまりも自分が惨めで…僕の怒りは、不満はどこにぶつければいいんだ!」
「怒りに震えていた僕に、父上がある提案をして下さった」
「提案?」
「
「父上が俺の暗殺を…」
「カイトは確かに強い、でも頭は弱いんだね。僕たちが
「うっ…」
慌てて振り向く
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