第54話 真実は意外なところから浮上する。

「これで、残るは死神総裁ただひとりだ」

 まりんが手に入れた解毒剤のおかげで、みるみる力を取り戻した細谷が静かに言った。

「彼さえ説得出来れば、命懸けのこの戦いは終わりを告げる。問題は、誰が彼を説得するかだけど……」

「私が、説得するわ」

 背丈を超える槍を手に、凛々しい面持ちで屋上に佇む細谷に、まりんは凜然と申し出た。

「彼の狙いは、私のいのちだもの。ここは、当事者同士の方がいいと思う」

「なら、俺が説得するよ」

 シロヤマが覚悟を決めた表情で口を挟む。

「当事者ってことなら俺も該当するし、まりんちゃんひとりをカシン様の許に行かせられないからね」

「そう言うことなら、私にも該当しますね」

 セバスチャンが、涼しい顔で微笑みながら後に続く。

「死神業界の中でも一番下っ端の下っ端を行くガクトくん(むかっ腹を立てたシロヤマが顔を顰める)よりも私の方が説得しやすいでしょう。そう……死神総裁の右腕として仕える、第一秘書のこの私ならね」

 キザな含み笑いを浮かべて真の正体をさらしたセバスチャン。

 思わずうん?と腑に落ちない表情をしたまりんと細谷が一瞬、フリーズする。

「死神総裁第一秘書……?セバスチャンが……?」と、細谷。

「てゆーか、第一秘書って……なに?」と、まりん。

「良かったら、貸そうか?スマホ」

 わけが分からなくなっている二人に、見兼ねたシロヤマが自身のスマホをまりんに手渡す。

 シロヤマからスマホを受け取ったまりんは細谷と一緒に視線を落とした。

 接続中のウェブサイトに投稿された小説らしきタイトル(永遠のさくらとさくらの守護者と書かれている)が、スマホの画面を通してでかでかと表示されている。

「赤ずきんちゃんと死神さまの著者が、同名義で投稿した小説。それを読めば、第一秘書がなんなのか分かるよ」

 素っ気なく補足したシロヤマの言葉で、俄然好奇心に駆られたまりんと細谷は物語を読んでみた。

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