第50話 進撃のあかずきんⅢ
「本来なら、達成せねばならない筈のガクトくんが使命放棄した今、結社の中でも高位に就くこの私が代理として、任務を遂行いたします」
セバスチャンが右手に携える剣がシュッと音を立てて大鎌に変形した。
「待て、セバスチャン!」
大鎌を手に、悠然とシロヤマを見据えるセバスチャンに、結界越しからシロヤマは叫び、制止を計る。
「赤園まりん。今度こそ、覚悟してもらいますよ」
ゆっくりと大鎌を傾けたセバスチャンは、鋭利なその刃をまりんに向ける。
「やァめろォォォ!!」
シロヤマが、屋上に響き渡るくらいの音量で絶叫した。その時だった。
「女の子は、シャボン玉やねんでぇ……」
灰色の燕尾服を右手でぎゅっと掴みながら、セバスチャンの胸に、左頬をくっつけたまりんの口から、小ボケと思しきネタが飛び出した。次の瞬間。大鎌を振るうセバスチャンの手が、まりんの背中すれすれでピタッと止まったではないか。
思わず静止画状態と化したシロヤマの後ろ姿が、うすら寒さを物語っている。
なんとも言えない微妙な空気が、シロヤマとセバスチャンの間に漂った。
まりんの魂を回収しようとするセバスチャンと、その光景を目の当たりにしたシロヤマが絶叫するところに、まさかのさぶいギャグをぶっこんだまりん。
物語において、最もな見せ場をぶち壊しにすると言う、ヒロインに有るまじき行為をしてしまったことに、まりんはあとあと後悔することになる。
「なぁにが「私との契約が成立した時点で、この勝負の決着はついているも同然」よ。確かに、あなたと契約したことで、本来より半分の力しか出せてないけど……私にはこの勝負、決着がついたようには思えないけど?」
冷めた目でセバスチャンを見詰めながら、まりんは言った。
普通に、何事もなかったかのように喋っとる……
妙に大人びた女性のような発言をするまりんに対し、シロヤマは内心そう思うと、静かに動揺したのだった。
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