第49話 あなたの主人は、この私です
「悪い……恩に着る!」
精悍な顔で、申し訳なさそうに返事をしたシロヤマ。大鎌から手を離し、自力で立たせると、屋上の床から引き抜いた槍を手に、まりんのもとへと急いだ。
「まりんちゃん!大丈夫?」
「シロヤマ!」
背後から駆け寄って来たシロヤマに、思わず驚きの表情をして一瞥したまりんがその名を叫ぶ。
「もしかして、この結界……シロヤマが?」
「うん。今……神様が、俺の代わりに結界を支えてくれてる」
「そっか……」
申し訳なさそうに微笑んだまりんは
「ありがとう。おかげで、助かったわ」
やんわりと礼の言葉を述べた。
「お待ちしておりましたよ。ガクトくん」
まりんの頭越しから、不敵な笑みを浮かべてシロヤマを見詰めながら、セバスチャンが口を開く。
「彼女に危害が及べば、真っ先にあなたが駆け付けて来るだろうと思っていました。が、一足遅かったようですね」
やけに落ち着き払っているセバスチャンに、シロヤマは妙な違和感を覚えた。
なんで、あんなに余裕でいられるんだ……まさか!
ようやっと、気付いたようですね。
何かに気付いた様子のシロヤマに、心の中で呟いたセバスチャンが怪しく微笑む。
「ま……」
「赤園まりん。あなたの
シロヤマより早く口を開いたセバスチャンがすっと左手を差し出し、まりんに命じる。
怪しく光るセバスチャンの目を見詰めながら、まりんは無言でセバスチャンの手の上に、自分の手を重ねた。
「まりんちゃん!」
シロヤマは咄嗟に手を伸ばしたが、結界を突き抜けたまりんの手を引き、手元に引き寄せたセバスチャンに阻まれ、あえなく失敗に終わった。
「私との契約が成立した時点で、この勝負の決着はついているも同然なのです」
シロヤマとの距離をじゅうぶんに置き、まりんを抱きかかえながら、余裕の笑みを浮かべてセバスチャンは言った。
ヤロォ……まりんちゃんの心を操り、結界の外に引っ張り出しやがった……!
セバスチャンにしてやられたシロヤマは、悔しさのあまり歯噛みした。
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