第48話 進撃の赤ずきんⅡ

 およそ三分ほど対峙していたまりんが手持の槍をスイングし、銀色の光線を飛ばす。

 それを待ち構えていたセバスチャンが、ヒュンッと剣を一振りし、前方から飛んで来るそれを撃ち返す。

 まりんはすかさず、両手で持った槍を突き立てて結界を張り、剣の風圧で勢い良く戻って来る光線を防いだ。次の瞬間。

 金色に輝く結界に光線が衝突。爆発音を立てて光線が消えた。

 それは決して、前方のまりんから目を離さないようにしながら、シロヤマが神様に返事をするのと同時だった。

「始まったな」

 まりんが張った結界に当たり、爆発した光線の音を聞き、気を引き締めた神様が冷静に呟く。

「まりんちゃんに、細谷くんの槍を持たせて正解だったぜ。

 さっきの、俺との戦闘たたかいで、自力で武器を具現化に出来ないくらい、かなり力が消耗しちまってるからな……」

 沈着冷静な中に、キザな雰囲気を漂わせて呟いたシロヤマは神様に一瞥すると

「感謝するぜ。青江神社最強の最高神であるあなたが、これまた最強の狩人ハンターを連れて屋上ここに降臨してくれて……おかげでなんとかなりそうだ」

 キザな笑みが浮かぶポーカーフェースで礼を述べ、力強く言葉を付け加えた。

「礼には及ばぬ。だが……感謝それは私ではなく、猛毒に倒れる健悟かれに言ってやってくれ。

 大切な彼女ひとを護るために、師弟関係にある老剣士を連れて私の神社もとを訪れた。

 健悟かれが率先して動かなければ、私も老剣士も、屋上ここには来なかったであろう」

 そして何も知らぬまま……これほどまでに誇り高く、けがれのないまりんとも、死別していたやも知れぬ。

 しんみりと微笑みつつ、内心そう思った神様はそっと、言葉を付け加えた。

 んなっ……!|細谷あいつ……あの老剣士の弟子だったんかよ!

 思わぬ新事実を知り、内心叫んだシロヤマに衝撃が走る。

「そうだな。細谷くんにも、礼を述べとくよ。セバスチャンとの戦闘たたかいが終わった後で」

 平静を装い、再びキザな笑みを浮かべたシロヤマが返事をした時だった。

 突如としてまりんを防護する結界が解け、急接近したセバスチャンの剣に弾かれた槍が後方へ飛び、咄嗟に身じろいだシロヤマの目と鼻の先で突き刺さった。

「……いきなり、ピンチじゃねーか!」

 シロヤマはそう呟くと、携えていた大鎌を突き立てた。

 サアァ……と、銀色の結界が半円形状に広がり、距離が縮まったまりんとセバスチャンの間に壁を作る。

「後は、私が結界を支える。早くまりんのところへ!」

 突き立てた右手ひとさし指と中指に神通力を集中させ、シロヤマの結界を支える神様が的確に指示した。

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