第47話 進撃の赤ずきんⅠ

 隙のない身のこなしで大鎌を振るう死神総裁カシン。

 かたや、引き抜いた剣でカシンの大鎌と交差させ、防御する老剣士。

 空中戦において、互角に戦う二人が発する音以外、屋上は不気味なほど、静まり返っていた。

 セバスチャンとの対戦において、細谷が使った煙幕弾の効果は、もう随分と前に切れている。

 視界良好となったセバスチャンの前に、凛とした面持ちのまりんが姿を見せた。

 細谷の槍を携え、精悍たる雰囲気を漂わせて、不敵な笑みを浮かべるセバスチャンと対峙する。

「おや……てっきり、ガクトくんが相手になると思っていましたが……あなたが対戦相手とは、予想外ですね」

「あらそう……ごめんなさいね。対戦相手がこの私で」

 薄ら笑いを浮かべて嘲ったセバスチャンに、まりんはわざとらしく、心を籠めずに詫びた。

「時間がないの。用件だけ、伝えるわ」

 毅然たる態度で口を開いたまりんは、手短に用件を伝える。

「もし、これから始まる対戦に私が勝ったら……あなたが、私にした契約を解除して」

「いいでしょう。あなたが私に勝利したならばその時点で負けを認め、解約してさしあげます」

 セバスチャンはあっさりと、まりんが提示した条件を呑んだ。

 まっ、ガクトくんよりも強いこの私が、力の弱い赤ずきんの娘かのじょごときに負けるとは、到底思えませんがね。

 腹黒いセバスチャンの心の声が、今にも聞こえてきそうだ。

「交渉成立……言ったからには、ちゃんと責任まもってもらうわよ!」

 フンッと、キザな笑みを浮かべたセバスチャンに、携えた槍を構えたまりんは気強く言った。


「いよいよだな」

 まりんより少し離れた後方に佇む神様が、精悍な面持ちで前方を見詰めながら呟く。

「ああ……正直今も、不安は拭いきれないけどな」

 神様の左隣に悠然と佇むシロヤマはそう、キザな笑みを浮かべて返事をした。

 二人とも、いつでもまりんを援護出来るよう体勢を整え、待機中である。

「自分で決めたことであろう。今更、後戻りは出来ぬよ」

「……そうだな。けど意外だったぜ……あなたなら、反対すると思っていたのに」

 穏やかな笑みを浮かべた、やに前向きな神様の発言を受け、顔色ひとつ変えず、シロヤマは応じた。

「反対はせぬ。美女かのじょの言うことには、頷けるものがあった。故に、私も手を貸すのだ」

 穏やかな口調で神様はそう告げた。フッとキザな笑みを浮かべるシロヤマが返事をする。

「そうかい……まァ、屋上ここにいるのが俺だけだったら到底、護り切れなかったのは事実だ」

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