第43話 葛藤と感謝Ⅱ

「それは俺達を欺くために、うまく気配を消してるだけかもしれない。今の本音ことばだって、本当かどうか……

 屋上ここで、赤園のいのちを奪おうとしたあの姿が本当の死神シロヤマなんだとしたら……俺は、こいつを信用出来ない」

 細谷はまだ、葛藤している。それを見透かしたまりんは、声のトーンを保ったまま、諭しにかかった。

「もし私達を欺くための嘘を、シロヤマがついているとすれば……その時は、その槍でっちゃっていいと思う」

 真顔で淡々と、凄いことを言って退けたまりんに恐怖し、青ざめたシロヤマの背筋が凍り付いた。

「でも今は……とても、嘘をついているように思えないから……私は、シロヤマを信じるよ」

 頬を赤く染めて、愛らしく微笑んだまりんはそう、言葉を付け加えて締め括った。

 心の底から信じるまりんの姿に、細谷とシロヤマは目を見張った。

「……俺も信じるよ。赤園が言ったことも……シロヤマのことも」

 降参したように微笑んだ細谷はそう言うと、シロヤマの首筋に突き付けていた槍を引っ込めた。

「俺はこれからも、自分の気持ちに嘘をつきながら死神としての使命を全うするだろう。

 けれど、これだけは約束する。まりんちゃんのいのちだけは、もう二度と奪わない。

 再び、きみのいのちを狙う者が現れたらその時は……全力で死守するよ」

 まりんと、面と向かって誓い、愛おしく微笑んだシロヤマは

「ありがとう。俺を信用してくれて」

 心の底から感謝し、愛情を籠めてまりんを抱き締めた。

「べ、別に……感謝されるほどのことじゃ……ないんだからねっ!」

 恥ずかしさのあまり、ツンデレ化したまりんはそう、口を尖らせながら言った。


「いい加減……離れろ」

 しばし、シロヤマがまりんを抱き締める光景を、むすっとした顔で眺めていた細谷がぶっきらぼうに言った。

「あれェ?もしかして細谷くん……嫉妬してんの?」

 口をへの字に結び、ツンデレ化したまりんをハグしたまま、細谷に一瞥したシロヤマはにやりとしながらく。

「そりゃ嫉妬すんだろ。自分が好きな赤園相手が、恋敵ライバルにハグされてるのを見てたら誰だって……」

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