第42話 葛藤と感謝Ⅰ

「死神である以上、自力での消滅はまず、不可能だからな」

 依然として、シロヤマに槍の切っ先を突き付けながら細谷がそう、無愛想に返事をする。

「そう……現世ここに唯一存在する、死封しふうの力を持った狩人ハンターなら、死神おれを仕留められる。

 だからこそ、望みを託したんだよ。死封の力を持った……狩人ハンターであるきみにね」

 観念したように告白するシロヤマに、自分の正体がバレていた事実。

 なにも知らなければ、告げ知らされた時点で驚愕するところだが、うすうす気づいていた細谷はやっぱりな。と内心思うに留まった。

「いつから、気付いてた」

「きみと、初めて対戦した時から……かな。きみが、死神除けの結界が張れるのを知ってぴんと来たんだ。まさか、死封の力以外にも魔力を操るとは思わなかったけど」

 明るくも、ほんのり切なく語るシロヤマはとても、嘘をついているようには思えなかった。

 今のシロヤマからは……俺への敵意とか、殺意とか微塵も感じられない。

 赤園に対する態度も……殺伐としてたさっきよりだいぶ丸くなったと言うか……俺はもう、赤園きみいのちを奪うつもりはもうとうないよ的な、なんとも穏やかな雰囲気を漂わせてるんだけど。

 ……いいのか?このまま……シロヤマこいつを信用しても。

「信用しても、大丈夫だと思う」

 難しい顔をして葛藤する細谷の心を読んだまりんがそう、真顔で言った。

 シロヤマの右肩に埋めていた顔をガバッと上げて助言したまりんに、細谷は思わずぎょっとする。

「赤園……起きてたのか?」

「うん……シロヤマが、本音を語り始めてすぐ……だけど話の腰を折りたくなかったから、寝たふりしてた」

 ばつが悪そうに、まりんは細谷に返事をした。

 それを聞いたシロヤマは恥ずかしさのあまり赤面し、いーやァァァ!!と心の中で絶叫する。

「話を元に戻すけど……私は、シロヤマを信用しても、いいと思う。理由は……細谷くんが今、思っているのと同じだよ。

 さっきの方が死神らしかったって思うくらい、今のシロヤマには、死神らしさがまったく感じられないの」

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