第41話 告白

「で?嫌われ者のおまえが、なんで消滅せずに生き残ってんだ?」

 返答次第では殺す。

 いつの間にかシロヤマの背後にまわっていた細谷がそう、どすの利いた声で尋ねたあとに言葉を付け加えた。左手に携えた槍の切っ先を、油断ならない死神の首筋に突き付けながら。

「さァ、なんでだろうね」

 槍の切っ先を左側の首筋に突き付けられたまま、フッとキザな笑みを浮かべたシロヤマは応じる。

「ただ……奇跡は本当に起きるんだなって実感したよ」

「はァ?」

 しみじみとした風情で微笑みながら応じたシロヤマに、細谷は怪訝な表情をした。

 上半身を起こした状態で、泣き疲れて寝入ってしまったまりんを抱きながら、シロヤマは淡々たんたんと本音を語り始めた。

 俺には、死神生命を懸けてまで、護りたい女性ひとがいる。

 その女性ひと死神なかまの手から護るには、対象となる赤ずきんちゃんの魂を回収しなければならない。だが……

 俺はどうしても、赤ずきんちゃんのいのちを奪う気にはなれない。

 護りたい。まっすぐで、直向きに困難に立ち向かう彼女を、この手で助けてあげたい。

 俺が消滅することで、大切な二人のいのちが護られ、救われるなら本望だった。まさか、こんな形で生き存えるとは、思いもしなかったけどな。

「……なァ、シロヤマ」

 しばし、俯き加減でシロヤマの本音を聞いていた細谷が沈黙を破り、素っ気なく口を開く。

「本当のことを言えよ。おまえ、誰かに自分を止めてもらいたかったんだろう?」

 的を射た細谷の問いに、シロヤマは思わず、目を丸くした。

 そっか……そうだったんだ。

 細谷の問いかけは、シロヤマ自身が気付かなかった、大切なことを気付くきっかけとなった。

 なんだか細谷にガツンと言われたような気がして、複雑そうに微笑んだシロヤマはやおら応じる。

「……今、ここで語った本音ことは全て、本当だよ。本気で……そう思っていた。けど……きみの問いかけも、あながち嘘じゃない。

 止めて欲しかった。彼女に鎌を向けたこの俺を……彼女の死を……俺自身が、消滅する形で」

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