第33話 死神さまの弱点Ⅱ

 なんとか……シロヤマを止める方法はないの?

 まりんは内心、そう思ってはみたものの、頭がちっとも働かない。

 それもその筈だ。辛うじて残る気力と集中力とで、自身の分身となり、対戦する紅蓮の炎を支え、操ることで精一杯。

 そんな状況で、虫のいいことが起きることもなければ、そんな方法など見つかる筈もない。

 そろそろ……限界のようね。

 己の限界を悟ったまりんは最後の力を振り絞り、操っていた紅蓮の炎すざくを凍らせた。

 爪先つまさきから頭のてっぺんにかけて分厚い氷の中に閉じ込めた紅蓮の炎すざくにひびが入り、バリンと音を立てて粉砕した。

 シロヤマが操っていた紅蓮の炎フェニックスも分厚い氷の中に閉じ込められ、すざくと同じ運命を辿った。

 だらりとした、まりんの右手に握られた銀の剣が音もなく消えた。

 再び静寂した屋上で、全ての力が尽きたまりんの体がぐらりと傾く。

 それを見逃さなかったシロヤマが、機敏な動きで突進する。

 間髪入れず、倒れかけたまりんの体を、駆け寄った神様が後ろから支え、瞬時に結界を張る。

 ついに目と鼻の先まで迫ったシロヤマが、大鎌を振り上げた。次の瞬間。


 ドスッ


 どこからともなく飛来した一本の矢が、シロヤマに命中した。

 左胸に白羽の矢が刺さり、振り上げた大鎌が手から滑り落ちる音が屋上に響く。

 ガクッと、膝から崩れ落ちたシロヤマは、そのまま横向けに倒れて動かなくなった。

「シロ……ヤマ……?」

 驚くあまり、頭がまっしろになったまりんは消え入るような声で問いかけた。

 だが、屋上の床上に倒れたきり、シロヤマは返事をしない。

 後ろからそっと肩を抱き、支える神様の腕の中で、体を震わすまりんの頭が混乱し始めた。

「……おかしいよ。死神って……不死身なんじゃないの?なのになんで……動かないの」

「まりん……落ち着いて、私の話を聞いてくれ」

 体を支えながらまりんを宥めると、神様は静かに話を切り出した。

「そなたの言う通り、死神は不死身だ。しかし……そんな死神にも弱点がある。

 死封しふうの力と呼ばれる、死神にとっては致命的な弱点となる力だ。

 もしも、ここに飛来してきた矢に、死封の力が含まれていた場合……

 それを食らったシロヤマはもう……助からない」

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