第28話 油断大敵Ⅱ
細谷を警戒しつつ、腑に落ちない表情をするシロヤマはふと、何かに気付く。
赤いロングコートのフードを被った女の子の後ろ姿が、槍を片手に仁王立ちする細谷の肩越しから見える。
なるほど……そう言うことか。
右手に銀の剣を携え、凛と佇むまりんの後ろ姿を視認したシロヤマはにやりとした。
何故かは知らないが、赤ずきんちゃんが
さっさと細谷を打ち負かして、任務に取りかかろう。
まりんに狙いを定めたシロヤマは、細谷との
うん?
再び腑に落ちない表情をしたシロヤマはもう一度、細谷の肩越しからまりんの後ろ姿を確認する。
ようやく異変に気付いたシロヤマの表情が、みるみる青ざめた。
「ンナッ……!なんでカシン様が
プラチナの大鎌を携え、廃墟ビルの屋上に降臨した死神総裁カシン様が威圧感を漂わせ、赤ずきんちゃんと対峙している。
見たら分かる……モノスッゴイ、ヤバイヤツやんっ!
驚愕するあまり、最後の部分が関西弁になってしまったが、冷や汗をだらだら流しながら面食らうシロヤマは、激しく動揺したのだった。
別の事に気を取られているシロヤマが見せた、ほんの一瞬の隙を、細谷は見逃さなかった。
右手に槍を携え、廃墟ビルの屋上を疾走した細谷は思い切り地を蹴り、飛び上がる。
「……っ?!」
両手で柄を握り、槍を振りかぶって突進して来る細谷の存在にシロヤマはすぐ気付いたが、時既に遅しであった。
このまま行けば、先手を打つ細谷の圧倒的勝利……になる筈だった。
この時起きた事は、細谷もシロヤマも想定外だったに違いない。
シロヤマに食らわそうと細谷が振り下ろす槍の先端が硬い何かに触れ、銀色の閃光が走った。
瞬時に二人の間に割って入ったセバスチャンが、垂直に構えた細い剣の刃で、顔面に迫る槍の先端を受け止めたのだ。
セバスチャンが盾代わりに構えた剣から放たれた、銀色の閃光で目が眩んだ細谷は堪らず、後方に飛び退き、退避した。
空いている左手を後ろに組み、剣を構えた右手一本で細谷の攻撃を食い止めたセバスチャン。付着した
びしっと佇むその後ろ姿には、絶対的な権力と地位に君臨する王族の、専属執事を彷彿するほどの気品があった。
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