第26話 諦めない強さ

 強力な力を内に秘めた特殊能力者を七人、己の魔力を持って具現化にし、対戦相手を威圧させる。そこまでは、細谷の思惑通りだった。

 しかし、いくら仲間をつくってもそれは、対戦相手のシロヤマよりも攻撃力が弱い細谷じぶんの分身に過ぎない。つまり、まったくの見せかけなのだ。

 細谷と対戦するシロヤマは、戦闘開始後すぐ、それを見抜いた。と言うのも、武器にもなる大鎌を駆使して、次々と攻め込んで来る人間と応戦するうちに、彼らの攻撃力が細谷とまったく同じであることに、シロヤマは気付いたからだ。

 それからが早かった。細谷の戦術を見破ったシロヤマが俊敏な身のこなしで人間達を薙ぎ倒して行き、王手をかける。

「きみの分身も、大したことないね。冥界の中で強者の中に入る俺に、呆気なくやられちゃってさ」

 さりげなく、得意げに自己アピールしたシロヤマがそう言って、細谷を嘲った。

「今のはほんの、小手調べだ。俺の本気はこんなもんじゃねェ……」

「その辺にしとけよ。どんなに凄んでも現状は変わらない。この勝負、俺の勝ちだ」

 その顔には薄ら笑いが浮かんでいたが、声のトーンは低く、細谷に触発され、凄みを利かせているように思えた。

 勝利を確信したシロヤマが大鎌を振りかぶり、細谷めがけ突進する。

 ……これまでか。

 威圧感漂うシロヤマにはったりを見破られ、万事休すの細谷が諦めかけた、その時。

「……っ!!」

 金色に光り輝く結界が発動。細谷を包み込む、半円形状の結界にシロヤマが振り下ろす、大鎌の刃が直撃。


 キイィ……ン


 結界に金色の波紋が広がり、高音を轟かせた。

 細谷が張ったにしては、随分頑丈な結界だ。

 直感で警戒したシロヤマが、すばやい身のこなしで後方へ下がる。

「そのままで、聞いて」

 背後から聞こえたまりんの声に従い、細谷はきっと前方を睨めつけつつも、耳をそばだてた。

「約束破ってごめんなさい。どうしても気になって、細谷くんの後、つけちゃった。

 そしたら神様と遭遇してね……頑張れ、死神に負けるなって、力を貸してくれたの。本当に借り物の力だけど……細谷くんにお裾分けするね。だから……」

 細谷と背中合わせになりながら、小声で話しかけるまりんはそこで一旦区切り、

「諦めないで」

 左手でぎゅっと、細谷と手を繋ぎ、微笑みながらそっと励ました。

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