第23話 バカがつくほど真面目なんです。

 美舘山町の外れにある、廃墟ビルの屋上で戦う細谷とシロヤマ。

 魔力で具現化にした槍の刃と、銀の大鎌のやいばがカキィンと交差し、火花が散る。

「俺と力を合わせて、セバスチャンと戦うんじゃなかったのか?」

 刃を交差したことでお互いの距離が縮まったのを機に、真顔を浮かべるシロヤマがそう、小声で細谷に尋ねた。

「最初はそのつもりだったよ。だけど今は違う」

 細谷は冷やかに小声で応えると、声のトーンを低くして言葉を付け加えた。

「結果的に、俺はここに来て正解だった。こうして、シロヤマの足留めが出来るんだからな」

「細谷くん、きみ……なにか知ってる?」

 鋭い質問を投げかけるシロヤマは、なにかに勘付いたらしい。

 半ば抵抗するかのように睨め付けた細谷は、鋭い口調で返事をした。

「これから、赤園のいのちを刈りに行くんだろ。そんなこと、絶対にさせないからな」

 細谷はいたって真面目だ。そしてその言葉は意表を突いている。

 フッとキザな笑みを浮かべたシロヤマは、徐に口を開く。

「それを、どこで知ったんだい?」

「おまえに付けてた発信機……あれにはちょっとした仕掛けがあってな。

 相手の居場所を特定するだけじゃなく、スマホのアプリを使って、盗聴出来るようにもしてあったんだよ」

 細谷の大胆不敵な仕打ちに、いよいよ恐怖に駆られたシロヤマが顔面蒼白になる。

「発信機に、なんちゅうものもつけてんだよ」

 真顔でネタばらしをした細谷の言動に、シロヤマは怯える声でぼやいた。

「使い方によっちゃ、法の裁きを受けることになるから気をつけた方がいいよ」

 相手が俺だから良かったものの……

 まるでスパイ映画さながらの仕打ちを受け、ひやひやしたシロヤマは、最後にそう言って細谷に注意した。

「そうだな。これからは、おまえ以外の人間にはしないようにする」

 あくまで冷静な細谷の対応。

「オイッ!」とシロヤマはつっこんだ。

「一時休戦は解除だ。おまえの目的を知った以上、全力で阻止する」

「出来るものなら、やってみな」

 フンッと、冷笑を浮かべたシロヤマは、闘志を漲らせる細谷を挑発した。

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