第21話 危機一髪Ⅱ

「これでニ対一だ。俺の力がどこまで通用するか分からないが、少しはおまえの有利になる筈だ」

「そうだね。ぶっちゃけ、俺ひとりじゃ彼を押さえつけることは難しかったろうし」

 キザな笑みを浮かべて返事をしたシロヤマは「彼女はどうしたんだい?」と尋ねた。顔色一つ変えず、細谷は静かに返答する。

「自宅に帰した。この戦いに、赤園を巻き込むわけにはいかないから」

「それは賢明な判断だ。さっきみたいに結界を張れば身を護ることは出来る。けど、セバスチャンの視界が行き届く場所に彼女を置いておくのは、危険だからね」

 ポーカーフェースで、シロヤマは返事をした。シロヤマに同意する形で頷いた細谷は、真顔で口を開く。

「セバスチャンに赤園はやれない。なんとしてでも、ここで食い止める」

「同意見だ。結果がどうなろうと、今の俺達には、大切な彼女ひとを護る義務がある」

 覚悟を決めたシロヤマの表情に、笑みが浮かんでいる。

 ふと気付くと、彼とまったく同じ表情を浮かべる自分自身がいた。

「……だからこそ、負けられない。シロヤマ!もう一度、俺と勝負しろ!」

 俄然、対戦モードになった細谷はぐっと身構えると、面前に佇むシロヤマに勝負を挑んだ。

「臨むところだよ」

 余裕綽々よゆうしゃくしゃくのシロヤマは不敵な笑みを浮かべると、対戦モードに入る。

 お互いに大切な女性ひとを懸けて争う男達かれらの姿……これほどまでに美しいと感じたことはない。私をもっと、楽しませてくださいね。

 突如として勃発した戦いを、少し離れたところから見守るセバスチャンはほくそ笑むのだった。


 魔力。多くは、魔法使いが魔法を発動するのに用いる力のことを示すが、その言葉の意味は諸説あるとされている。

 実際に魔法陣を描いたり、魔法が発動するのと同時に光り輝く魔法陣が出現することこそないが、頭でイメージしたものを具現化にし、地球上のあらゆるもを動かす念動力を兼ね備えた特殊能力も、魔力と呼ばれている。

 そんな魔力の使い手であるまりんは、具現化にした銀のつるぎでもって、果敢にも死神総裁に立ち向かう。しかし……

「ただ闇雲に剣を振り回すだけでは、到底、勝ち目はないぞ」

 そう、冷やかな視線を投げかけて言い放った死神総裁カシンは、まりんが思っている以上に手強かった。

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