第19話 狙われた赤ずきんちゃんⅡ

「……分かったよ」

 抵抗はあったが、断るわけには行かなかったのでシロヤマは、冷静沈着なセバスチャンの条件を呑んだ。シロヤマにとってこれが、苦汁の決断だった。


 何故か、悪い予感が胸を過る。

 無慈悲な死神にいのちを奪われそうな、嫌な予感が。

 そしてそれは、突如として姿を見せたシロヤマにより、的中するのである。

「シロヤマ……」

 はっと息を呑むまりんの呼び声に、シロヤマは反応しなかった。

 真一文字に口を結び、怖ろしい死神と思わせるほどの威圧感を漂わせている。

 今までと打って変わるシロヤマの姿に、不安げな表情をしたまりんは戸惑った。

「赤園まりん」

 何秒か沈黙が流れた後、冷やかな口調で不意に、シロヤマが口を開く。

「俺が今、きみの前に姿を現したのは外でもない。果たさねばならない使命の下、きみの魂を回収させていただく」

 まりんはこの時、妙な違和感を覚えた。

 声や姿形はシロヤマだが、どこか違う。

 普段のシロヤマなら、こんなにも厳格で死神らしさを漂わせたりしない。そう、何故なら彼は……

「チャラ男だから」

 冷静にそう分析したまりんの口から、心の声が洩れる。

「手を出すのも早いし厨二病ちゅうにびょうの気もあるしはっきり言って、死神感ゼロだから」

 真顔で沈着冷静にシロヤマを見据えたまりんは「あなた、何者?」と尋ねた。

 凜然たるまりんの問いかけに、フッ……と口元にキザな笑みを浮かべたシロヤマは応じる。

「完璧だと思ったのだが……君の直感を侮っていたようだ」

 シロヤマはそう言うと、ポンッと軽い音を立てて元の姿に戻った。

 今までシロヤマに変身していた相手が瞬時に元の姿に戻り、その姿を目の当たりにしたまりんは思わず息を呑んだ。

 ポニーテールにした漆黒の髪に、凛と鋭い瑠璃色の瞳。足元すれすれの、漆黒のマントを靡かせ、背丈を越す、プラチナの大鎌を携えた長身の死神の姿。その、あまりの迫力にまりんは、ド肝を抜かれた。

「お初にお目にかかる。私の名はカシン。冥界めいかいは、死神結社しにがみけっしゃ総裁そうさいだ」

 凛と鋭い眼差しでキザな笑みを浮かべる死神総裁カシンは「もうどこにも逃がさない。大人しく観念してもらおう」とまりんを威しにかかった。

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