第17話 御守り

 赤ずきんちゃんと細谷くんを逃がす時間稼ぎをする筈が……

 まさかの事態にすっかり気が動転してしまっている。

 いや、落ち着け俺!

 必死で乱れた気持ちを落ち着かせたシロヤマははっとした。

 予想外のこの状況をなんとか利用すれば、二人を逃がせるかもしれない。

 ピンチがチャンスに変わった瞬間だった。

 新たに計画を立て直したシロヤマは平静を装い、セバスチャンに掛け合った。

「……判った。きみの言う通りにしよう」

 沈着冷静に口を開いたシロヤマは、最後にこう言葉を付け加えた。

「但し、ここじゃダメだ。他の通行人の目につきやすいし、目立つ。人気がない、二人きりになれる場所へ移動しよう」

「承知しました」

 いつになく真剣なシロヤマの申し出に、不敵な笑みを浮かべたセバスチャンは承諾した。


 まただ。

 話がまとまり、シロヤマとセバスチャンが連れ立ってその場を立ち去った後。

 細谷と一緒に居残り、むっとする表情でまりんは内心思った。

 順調に進んでいた筈が、また変な方向へ物語が傾いている。

 即興とは言え、こんなんで本当にいいのか作者!

 一応、読者を意識して『それなりの配慮』をしているようだが、適当に物語を進める作者に対し、まりんはふつふつと怒りが込み上げてきた。

「赤園」

 ふと、声をかけて来た細谷の冷静な声で、静かに怒っていたまりんははっとした。

「今のうちに、これを渡しておく」

 細谷はそう、穿いているジーンズのポケットから取り出した物を、条件反射で顔を向けたまりんに手渡した。

「御守り……?」

「赤園に逢う前に、青江神社あおえじんじゃに行って買って来たんだ。俺の力と……青江神社の最高神の力が宿ってる。

 これさえあれば、ありとあらゆるやつらから赤園を護ってくれる。これを持って、先に家に戻れ」

「細谷くんは……どうするの?」

 シリアスな雰囲気で言い聞かせた細谷に、一抹の不安を覚えたまりんは尋ねた。細谷は真顔で答えた。

「これから二人を追い掛ける。あのまま……シロヤマをほっとくわけには行かないから」

 シロヤマの身を案じているらしい。まりんははっとするのと同時に、細谷の優しさに触れたような気がした。

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