第13話 helpme!Ⅱ

 これも、セバスチャンの手の内なら、まりんはその手の平の上で、見事に踊らされたことになる。

 結果、そうなってしまったとしても、あれは紛れもない事実だ。今更否定したところでどうにもならない。

「その反応……図星ですね」

「そ、そんなわけ……ないじゃない」

 不敵な笑みを浮かべるセバスチャンに向かって、まりんは必死で平静を装い、返事をした。

「無理して、隠さなくても良いのですよ」

「無理なんかしてない!本当のことだもん!」

「では、細谷くんとは、今のところ何もない……と?」

「そうに決まってるじゃない!」

 むきになればなるほど、事実を認めることになり、相手の思うつぼにはまるとは、このことだ。

 今更、どうにもならない。

 頭では分かってるのについ、思ってることと反対の言葉が、口を衝いて出てきてしまう。

「そうですか」

 あくまでも冷静に振る舞うセバスチャンは、あっさり折れた。

「でしたら、私にもまだ、チャンスはありますね」

「え?」

 きょとんとしたまりんは、すぐ目と鼻の先にいるセバスチャンを見据えた。

 セバスチャンは今や、不敵から自信に満ちた笑みを浮かべている。

「私ならば、あの少年よりも遥かに、あなたを幸せに出来る」

「やけに自信があるのね」

自信それがなければ、はっきりと宣言はしませんよ」

 冷静さを取り戻し、毅然と向き合うまりんに、顔色ひとつ変えず、セバスチャンは言った。

「赤園まりん。今ここで、永遠の愛を誓いましょう。私のことはその後で、じっくりと知っていけばいい」

 気付くと、冷酷な笑みを浮かべるセバスチャンが、そこにいた。恐怖で顔が引きるまりんは再び、頭が真っ白になった。

「本気……なの?」

 何も考えられないなか、まりんは声を振り絞り、尋ねた。

「はい」

 セバスチャンが、冷酷に返事をする。

「やっぱり、信じられない!」

「ならば、確かめてみますか?私が、本気なのかどうかを」

 現実を受け入れないまりんの右手首を捕まえたセバスチャン。そのままぐっと手を引き、光の速さで顔を近づけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る