第7話 俺の名前Ⅰ

 細谷くんが、私のことを……

 面と向かって告白されたまりんは、頬を赤く染めたまま、しばし茫然とした。

 なんだ、両想いじゃん。

 それが理解出来た瞬間、まりんは満面の笑みを浮かべて歓喜した。

「細谷くん、私……」

 続けとばかりに口を開いたまりんを、まっすぐ見詰める細谷が静かに制す。

「後で話を聞くよ。今は……ヤツをなんとかしないとだから」

 細谷はそう言うとまりんに背を向け、不敵な笑みを浮かべる相手と向かい合った。

「きみが何者かは知らないが、このまま放っておくわけにはいかない」

 相手はそこで一旦区切ると、「彼女を渡してもらおう」と細谷に迫った。

 凄みを利かせた相手に、細谷は毅然と拒否した。

「断る」

「ならば仕方がない。手荒なことは避けたかったが……力尽くで奪うまでだ」

 冷酷に言い放った相手は、念力で銀色の大鎌を出すと、対戦モードに入った。

 相手が発する闘心のオーラに圧倒される。

 こうみえて俺、結構強いんですけど。とでも言うような威圧さえ感じる。

 死神の相手が放つオーラに当てられ、まりんの全神経がぴりぴりした。

 一方、まりんを背に佇む細谷だけは、いたって沈着冷静な雰囲気を漂わせていた。

 まりんにかけられた強力な呪いを、簡単に解くくらいだ。戦闘モードの死神を面前にしても、落ち着いていられるのだろう。

「言っておくけど、手加減なしだから」

 相手は冷やかに言うと、携えた大鎌を振りかぶって突進した。


 キイィィ……ン


 細谷が瞬時に張った結界に、接近する大鎌のやいばが衝突。金色の波紋が広がった。

「へぇ……死神除けの結界なんて張れるんだ」

 わざとらしく驚いて見せた相手が、細谷の面前でそう言うのが聞こえた。

「この日のために、日頃から訓練してるからな」

 細谷はそう、人差指と中指を突き立てつつ、冷やかな口調で応じる。

「そうかい。でも……赤ずきんちゃんを護るにしては、とてももろいよね」

 冷笑を浮かべて言った相手は、大鎌に力を籠めた。次の瞬間。


 ビシッビシッ


 力が増した大鎌の尖端から、細かい亀裂が生じた。金色に輝き、徐々じょじょに広がって行く。

 細谷くんの結界が……それくらい、彼は強い相手なの?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る