第5話 死神さまの発想Ⅰ

「彼女にかけた呪いは、呪いをかけた俺じゃないと解けない。なのにきみは強力な呪いを、いとも容易く解いて退けた。きみは一体、何者だい?」

「さぁ、何者だろうな。俺は」

 不敵な笑みを浮かべた細谷はそう、余裕を見せつけながら言った。

「余裕でいられるのも、今のうちさ。そう……今から俺が言う言葉できみは、余裕がなくなり冷静でいられなくなる」

「そんなこと、あるわけねーだろ」

 キザな笑みが浮かぶ、ポーカーフェースで告げた相手に、いささか警戒した細谷が強く出た。

「どうかな。なにしろきみは……赤ずきんちゃんの彼女を通して、俺と間接キスしたんだから」

 勝ち誇ったような笑みを浮かべて放った相手の一撃に、ぎょっとする細谷とまりん。


 予想外な発想――?!


 思いがけない衝撃を受け、まりんと細谷は心の中で同時に叫んだ。

 長身で、上下ダークスーツがよく似合うイケメンだが、毛先を遊ばせた茶髪といい、どことなくホストの雰囲気漂うチャラ男に見える相手。

 そんな彼の発想は、口をあんぐり開けて茫然と佇む二人にとって、予想外にぶっ飛んでいたのであった。


 登下校する時、どこかへ外出する時、まりんは決まって、お気に入りの赤いロングコートを着る。

 今はまだ理由を話したくないけれど、コートを着ている時は、頭からすっぽりとフードを被る。これがまりんのお決まりスタイルなのだ。

 そんなまりんを童話の赤ずきんちゃんにたとえ、間接キスをするとは……相手かれの発想は、口をあんぐり開けて茫然と佇むまりんと細谷にとって、予想外にぶっ飛んでいたのであった。

「どうだい?思わずどん引きするくらい驚いたろう」

 腕組みをしながら、ふふんと得意げに尋ねた相手。

 してやったりと言いたげににやりとするその言動が何故か、放心状態からめたまりんと細谷をイラッとさせた。

「驚くもなにも、おまえ……」

 冷や汗の浮かぶ真顔で細谷は、そこで一旦区切るとすかさず「気色悪いな」と冷やかに軽蔑した。

 嫌悪感丸出しの細谷に向かって、フンッと冷笑を浮かべた相手は、開き直ったように反論する。

「気色悪くて結構。だがね、この世の中には『イケメン同士の危険な恋』だってある。きみもしてみないか?刺激的で、燃えるような男同士の危険な恋を」

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