(2)銀の玉
私が住む日吉という街は、日吉駅を境に面白い構造をしている。
駅を出て西に向かうと五つの道が放射状に分かれている。一番左にある道以外はそれぞれ〇〇通りと名前が付けられている。こういう言い方をしたので当然のことだが一番左の道は通り名がない。惨めな存在である。
駅を出て東へ向かえば大学のキャンパスがあり、でかでかとその存在を主張してくる。季節問わずここの大学生が飲み潰れては駅近くを仮の寝床とするのは、もはや日吉における日常である。
そしてこの五つの放射路とこの街の経済基盤でもある大学との中心には、鎮座する銀色の玉がある。
聞いたところでは、駅を出てすぐのパチンコ屋で生活費を擦った大学生の怨念がつもりにつもりできたのがこの巨大パチンコ玉という話もあれば、実は酔い潰れた学生をあらゆる危機から守るためのシェルター(定員2名)という話もあるが、結局のところ真偽は定かではない。
私はこの銀の玉をえらく気に入っている。この銀の玉を見ているとき、なぜか失われた青春が取り戻されていく気がするのである。
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