104話 飛べた魔女はただのエイプリールフール満喫中
今日も元気だ、そうだ、嘘をつこう。
「というわけで、今から嘘をつきます」
「何がどうして、というわけなんだ。ちゃんと説明しろ」
「そんな、いまどき政治家だってちゃんと説明責任果たしていないのに、悪い魔女の説明が必要だと思いますか?」
「必要だ」
チッ。
ただ思い付きで嘘をつこうとしているだけなのに。細かいなぁ。
「だいたい、理由も分からず嘘をつくと宣言されても意味が分からないだろ」
「固いですね。丁度今日が異界では嘘をついてもいい日だからというだけです」
確か、エイプリールフールとか名付けられていたはず。私もさらっとしか聞いていないから良くは知らないけど、嘘をついていい日なのは間違いない。
「そんな日があるのか? 変わってるな。嘘なんて大抵の人間が多かれ少なかれついているだろうに」
「うわっ。流石第二王子。真っ黒発言」
いや、王子の言う通りなんだろうけどさ。
嘘を全くついていない人間なんていないとは思うけど、胸を張って言えるセリフではない。
「だいたい嘘をつかなくても、あえて言わずに相手に勘違いさせるとか色々あるだろ。そもそも嘘をつく事が悪だという発想が間違っているな。世の中つくべき嘘もある」
「いやー、そんな、真面目発言されても」
確かに、全ての嘘が悪だとするのは間違っているだろうし、勘違いして嘘だと気が付かずに偽りを口にすることもある。それを嘘をついたと判断すると、悪意のまったくない嘘となる。
流石に、相手にわざと勘違いさせるのは真っ黒、腹黒だと思うけれど。まあ、王政の王子様って、結局政治家だもんね。
「お前に嘘はつかないけどな」
「そうなんですか?」
「嘘をつくと、お前の場合悪意ある曲解をした上で婚約破棄破棄発言しだすと俺は踏んでいる」
私のことを何だと。
いや……言うわね。うん。言うわ。
流石王子、よく分かってる。
うんうん頷いていると、王子がジト目でこちらを見ていたので、目をそらす。
「それで、どんな嘘をつく気だ」
「えーっとですね。私、王子と結婚します」
「えっ? ほんと――いや、待て。それが、嘘って事は、その反対って事だよな?」
王子が頭を抱えていた。
すっごく困った顔を見て、ニヤリと私は笑った。
「王子と結婚して、子供を産んでもいいかなと、最近思っているんですよね」
「やめろ。別に子供が絶対欲しいとは思っていないけれど、口に出して否定されたいわけじゃない」
「ちなみに、今、私のお腹の中にはグラム98円のお肉ちゃんがいます」
「……まて、それは本当だな?」
何故、バレタ。
鋭い眼光に、私は、ダラダラと目をそらした。
「つまりお前は太ったと自己申告するためにわざわざ訳の分からないことを言い出したんだな」
「……いやー。流石に、そろそろ頑張ってダイエットしないとマズイかなと思いまして。最近、クリス甘いし。でもブートキャンプ嫌なので、自己申告方法を考えてみました。ちゃんと自分で痩せるんで、見逃して欲しいなぁと」
「分かった。ただし、そのダンス? 俺にも参加させろ」
「えー。私の踊ってみたがみすぼらしくなるようなキレッキレダンスを隣でされそう……」
イケメンと豚が踊ってみたとか、何だそれ。誰得なんだろ。
まあ、ただのダイエット動画だから別にいいんだけど。
「ああ。そう言えば、異界では嘘をついていい日は、昨日でした」
「は?」
「さあ、一緒にダンス覚えますよ。異界の動画で、踊りたくなるもの選びましょう」
「いや、まて。色々、ちょっと待て。つまり、何が嘘で、何が本当なんだよ!!」
今日も元気だ、王子五月蠅い。
ちゃんと私から告白できるようになるまでは、もうすこし黙っていて待っていて欲しいものだ。
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