101話 ツイネタ4

【神様はただのモンペ】


「最近は、弟に魔法を使われないのですね?」

 ある日、私の婚約者である、【癒しの魔女】にそんな質問をされた。

「……ああ」

 朝日が眩しくてテンションが下がっているのもあるが、少々普段とは違う状態になっている為、どうにも覇気のない声が出てしまった。


「弟にとうとう本気でキレられました? あまりにブラコンが過ぎると嫌われますものね」

「弟は関係ない。そして嫌われてない!!」

 にこやかにとんでもない事を言う【癒しの魔女】に私は慌てて反論した。それにしても、何と恐ろしいことを。

 あの可愛い弟に嫌われたら生きていけない。


「……では、何故ですの?」

「使えないんだ。部屋魔法を起動しようとするとエラーがでる」

 自分の能力に制限がかかる異常事態は初めてだ。最初に発動しなかった時は、一瞬自分は神に見捨てられてしまったのかと思った。

 だがその後また使用できるようになったので、多分まだ見捨てられてはいないだろう。私の出生の事、この国の現状の事など色々な問題がある為、いつか神にも呆れられ加護を失ってしまう日が来るのではないかと思っていた所為で、余計に驚き、落ち込んだ。


「そうなのですか? 他の方には試されました?」

「侵入者等には問題なかった。どうやら【異界渡りの魔女】に対して使うと時折起こるらしい」

 侵入者には魔法使いも魔女も居たので、魔女だからという事でもなさそうだ。

「異界渡りの魔法も空間を司るものですし……何か関係が?」

「エラーナンバー18。エログロ禁止と出るがどうだろう」

 起動が失敗すると必ず俺の目の前にその文字が現れる。一体、どういう事なのか。


「なるほど。それは使い魔たちの方が詳しそうですわね」

「そうなのか?」

 俺は失敗する原因が皆目見当もつかなかったが、彼女は違うらしい。

「恐らく、神が規制をしてるだけですわ。ただ気になるのですけど、侵入者はそのエログロ部屋に入るのですか?」

「ああ。今の所、特にエラーはない」

「……男同士でも?」

「男が多いぞ?」

 侵入者は暗殺が目的というものが多いので、やはり男が多い。女だと腕力などで私に敵わなかったりするからな。


「……その能力はさぞかし恐れられてそうですわね」

「そうだろうか」

 この能力は自分自身には使えないという制約があるので、どれぐらい怖い事が部屋の中で行われているかは分からない。中も見えないしな。聞いた話によると、部屋の中に指令が置かれ、それを達成しないと出られない仕組みになっているそうだが。


 とはいえ神のの規制ならやれる事などないし、とりあえず、仕事しよう。



◇◆◇◆◇◆


【レビュー記念】

 うちの子可愛いと言ってもらえたので。



 ある日、神様からお言葉がいただけた。


「俺の婚約者は可愛い。よく分かってるじゃないか」

「ま、まさかの豚ブーム……。いやいや、ペット豚も可愛いですけど、世の中の可愛いは猫です」

 豚はない。

「わん」

「犬も勿論可愛いです」

 私が猫型をほめると、異議ありと言わんばかりに、犬型の使い魔が吼えた。そうですね。贔屓は良くない。


「……ピー」

「勿論、コルちゃんも可愛いです」

 犬型を褒めれば、王子の使い魔が悲しそうな顔で私を見上げた。罪悪感が半端ない。

「ピッピッ」

 更に鳥型からまで苦情が来た。

 すみません。私の配慮が足りなかったようです。

「もう使い魔は皆可愛いです。可愛いは正義です。一緒にお茶会しましょう」

「俺は?」

「そんなの……うう。一緒にどうぞ。ご主人枠で席を用意します」

 王子まで苦情を入れないで下さい。その顔は反則です。 


「俺は、どうなんだ?」

「しつこいです」

「可愛いか?」

「ノーコメント」

 あざとい顔で言うな。色々なんか、削れる。


「お前は可愛いぞ」

「だ・ま・れ」

 今日も元気だ。だけど色々削れるから、王子は黙って下さい。


◇◆◇◆◇◆


≪お題≫

異界渡りの魔女と王子は部屋全体にクリスマスの飾り付けをしないと出られない部屋に閉じ込められました。

#2人でOOをしないと出られない部屋

https://shindanmaker.com/689645


 久々に○○しないと出られない部屋に入れられた私は、特に問題のなさそうな指令にほっとしつつ、王子と一緒にクリスマスの飾り付けをした。

「おい、クッキーばかり飾るな。もっとバランスよくだな」

「適当でいいじゃないですか」

 王子の料理の腕前を見る限り、完璧主義だなと思ってはいたけれど、まさかこんな飾りつけまで完璧を求めるなんて。顔がいいのに、ちょっと面倒な男である。


「サンタに失礼だろ」

「失礼って、サンタはいな――まさか信じてるんですか? えっ。いまだに?」

 私はサンタ否定説を言いかけて、あえて黙った。

 嘘でしょ?! と思うけれど、純粋培養されてきたのならそう思っていてもおかしくない。

「信じるもなにも、プレゼントが来るしな」

「……あー。生憎、私のところには生まれてこのかた一度も来てないので。ああ。でもあれ、いい子へのイベントですもんね。私は悪い魔女だから、あー、よく分からなくて」

 どうしよう。言えない。禁断の言葉を。

 悪い魔女だけど、子供の夢を打ち砕くのは良くない事ぐらいは分かっている。サンタはいるし、着ぐるみには中の人などいない。


「なら、今年は来るぞ」

「いや、……どうでしょう」

 私は王子から目をそらした。

 どうしたらいいのか分からない。

「俺がサンタ代理になるから間違いない。折角だ。これまでのぶんも――」

「は?代理?」

 ん? 何やら私の考え方と王子の考え方に大きな溝があるらしい。私が知っている限り、サンタに代理などいない。


「世界中に何人子供がいると思ってるんだ。じいさん一人に任せられるわけないだろ。その子を一番愛するやつがサンタの代理でプレゼントするんだよ。だから、これからは俺がするんだ」

 ……その考えはなかった。

「だから気合い入れて飾れ」

「でもこの部屋出たら入れませんよ? それに私は悪い魔女で、受け取る理由が……」

「なら代理でなく、婚約者へのプレゼントだ。よしそうと決まれば、飾りはこれでいいいか」

 王子はあっさり飾るのを止めた。確かにドアはもう開いてそうだけど。でも、いいのか、こんな中途半端で。


 折角王太子が用意した部屋なのに、この状況。……王太子、泣きませんよね?



◇◆◇◆◇◆


≪お題≫

異界渡りの魔女の人生を二文字で表すと…


『 鈍 感 』


#あなたの人生を二文字で

https://shindanmaker.com/931776


「以上、神の御言葉よ。ありがたく受け取りなさい」

 予言の魔女が唐突に豚小屋で予言を受け取った。というか、これ、予言じゃない。

「……納得」

「意義あり。私ほど異界の限定お菓子に敏感な小豚はいません」

 王子が勝手に納得しているけれど、いや、えっ? 私はそんなに鈍感ではないと思うんだけどなぁ。

「いや、分かっててやってるから、鈍感とはまた違うのか?」

 今日も元気だし、別にどっちでもいいんだけど。



◇◆◇◆◇◆


≪お題≫

王子の人生を二文字で表すと…


『 仕 事 』


#あなたの人生を二文字で

https://shindanmaker.com/931776


「以上、神の御言葉よ。ありがたく受け取りなさい」

 再び唐突に豚小屋でされる予言。……だから、これ本当に予言なんだろうか? イメージと違う。

 とはいえ、神が勝手に言っているものだから【予言の魔女】は悪くない。


「でも納得です。王子は豚小屋に毎日通うぐらいの仕事人間ですもんね」

「趣味もかねてるからな。もっと仕事人間になって欲しいなら、本気を出すが?」

「……な、何を?」

 いや、人間、適当に生きた方が楽だし。うん。本気は早々出さなくていいと思う。


◇◆◇◆◇◆


≪お題≫

異界渡りの魔女はメモを手に取った。

「目の前の液体はあなたが飲むとコーラです。お連れ様が飲むとカフェオレです。ビンの中身をすべて飲み干すと部屋の鍵が開きます。どちらが飲みますか?」

#どちらが飲みますか

https://shindanmaker.com/933277


 再び○○から出られない部屋に入れられた私は、手紙に書かれたお題を先に見て、小さくガッツポーズした。

「……私が飲みます。飲まないと出られないそうです」

「中身は何だと?」

 瓶に入った飲み物の色は黒い。おおよそ、人が飲む色ではない。


「……依存性はありますが、致死性は低い毒ですね」

 糖質と言う名の依存物質は、時に糖尿病を発症させる。でも、絶対なるとは限らない。

「そんな危険なもの飲ませられるか。俺が飲む」

「いいえ。これは異界渡りの魔女だからこそ私が飲まねば」

 王子に渡してなるものか。最近、王子が禁止する所為で炭酸を飲んでないのだ。あの泡を私の体が求めている。


「……俺が王子だからか」

「いいえ。私が飲みたいからです。全ては私のためです」

「俺のために……。絶対死ぬなよ」

 王子が悲壮な顔をした。

 多分一本ぐらいじゃ死なないと思う。

「すぐに体を悪くすることはないのでご安心を。ゴクゴクーー。あまりこちらをみず、耳をふさいで下さい」

「何故だ」

「豚でも女です。無様な姿は見せたくないのです」

 炭酸を飲むと困るのがゲップだ。どうしても出てしまう。でも他人のゲップはあまり気持ちのいいものではない。


「……分かった」

 王子は少し沈黙した後、納得して耳を塞いで私に背を向けた。

 よっし!!

「ゴクゴクッ。げぷぅ。あー、なんだかポテチが食べたくなってきたわ。王子公認で飲めるコーラ最高!」

 

 その後すぐ、からくりがばれて、怒られたけれど、久々の炭酸は美味しかった。王太子にはこういう部屋を毎回用意して欲しいものである。

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