52話 飛べた魔女はただのお取り寄せ中
今日もいい日だ、タピオカ美味い。
甘ったるい糖質たっぷりジュースとタピオカという、炭水化物コラボの背徳感。凄いです。タピオカ先輩。めっちゃ太るって分かるのに、異界の若者を虜にさせたその魅力。私にもビンビン伝わってきます! 何処までもついて行きます。
「ずごごごご」
「俺が来るたびになんか食べているのは止めろ」
太めのストローで勢いよく飲んでいると、すごく嫌な顔をした王子が現れた。でも嫌な顔をしても美形度が下がらない。流石、インスタ映え男だ。きっと何と一緒に映っても映えさせるに違いない。
「王子が来るタイミングが悪いんですよ」
「んなわけあるか。どの時間に来ても、大抵片手に何か持ってるだろ。せめて水にしろ」
「駄目ですって。私、水を飲んでも太るタイプなんです」
「その手に持った凶悪物体を置いてから、その発言はしろ」
仕方がない。私は飲みかけタピオカミルクティーちゃんを冷蔵庫にしまった。今日もレイ君はいい子に待てをしてくれる。ちなみにレイ君で暖を取るのはやめた。そして黒く光る反社会的害虫が出てきた時用に、一瞬で相手を凍らせるスプレーを異界から取り寄せた。これでいつでも私は奴と戦える。【異界渡りの魔女】の恐ろしさを知るといい。
「そう言えば、だんだん朝晩寒くなってきましたね」
「ジュースをずごずご飲んでいれば、寒くもなるな」
「いえ、そう言う意味ではなく……あっ。筋肉の違いですか。納得です」
肉布団が多かった時は、血行が悪くなり冬は寒かったが、肉布団がなくなるとなくなるで寒いのだ。反対に王子は筋肉がしっかりあるので、寒さに強いに違いない。夏にも強いのは、あえて触れない。
「ちげーよ。嫌味だよ、嫌味。気付け!!」
そんなの分かってるけど、人間いつ死ぬか限らないのだから、好きな物はちゃんと食べて後悔しないように生きなければ。死ぬ直前に、あの時、アレを食べておけばよかったななんて思って死にたくはない。
「折角だから、温まるもの系を買いましょうか」
「流すなよ。まあ、いい。どんなものを買うんだ?」
どうやらタピオカの話は流してくれるらしい。よかった。また後で飲もう。
「折角なので最終的にはコタツという異界の魔物を買う予定ですが、まだ流石に早いので、まずは体の水分を熱に変えるという衣類にしましょう」
「ちょっと待て。何だ、そのコタツという魔物は? 危険なのか?! というか、危険なのになぜ買う?!」
「危険というか……まあ、危険かもしれません。情報によると、コタツという四角いものは、一度中に入るとどんな人でも堕落させるそうです」
どれだけしっかりした人間でも、ダメ人間にさせるという魔の道具らしい。私も使ったことがないので、その真価は分からないが、豚にピッタリな道具なのは間違いない。
「……怖いですか?」
王子は私を見て、ごくりと唾を飲んだ。未知のものというのはそれだけで、人に恐怖心を抱かせる。
「こ、怖くなどない」
「強がらなくてもいいです。コタツを出すのはもっと寒くなってからと決めていますので、身の危険を感じたらここに来るのはしばらくやめて下さい。春になったら片づけますので」
異界の漫画や小説によく出て来るコタツ。一体、その魔物の威力はどこまでなのか凄く気になるが、あの魔物が力を発揮するのは真冬という事なので、今は我慢だ。
「いや、絶対俺はお前の所に行くからな!」
「ふふふ。魔物を飼いならした魔女の所に来てただですむと思ったら大間違い。間違いなく王子も堕落します。予言の魔女ではないですが、私はそう予言しましょう!」
「なんだと……。いや、俺は魔物なんかに負けない。というか、そもそもそんな危険なものを買うなよ」
「何を買うかは、私が決めます!」
果たして、コタツにより、王子は堕落するのか。それは、悪い魔女にも分からない。
とりあえず、冬になったらぬっくぬくにしてやんよー。
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