第5話 チーズハットグを食べる
2019年の2月中頃。福岡は天神、若向けのアパレルが多く入ったビルのフードコートでソイツと出会った。木造の小洒落たカウンターにかけられた看板に描かれた、半分程に切断されたアメリカンドッグの間からチーズがびよんと伸びたイラスト。ちまたで話題の『チーズハットグ』という軽食だ。
私はこれが日本で流行る少し前からその存在を動画サイトで知っており、サクサクのボディから伸びるチーズという絵面に心惹かれていた。しかし当時の地元にこんなお洒落フードは無かったので、私は動画を見ながら思い馳せるしか無かったのだが、ソイツが旅先の福岡で見つかったときたものだから、私は興奮しながら同行者である友人の秋沢圭佑に「食べていこう」と持ちかけた。これに対し秋沢は二つ返事で了承した。それもそのハズ、都会の流行に敏感なシティボーイの秋沢もチーズハットグという存在に興味を持っていたのだ。
私は早速カウンターに並び、チーズハットグを2つ注文した。そして5〜6分程で出てきたそれにケチャップとマスタードをかけ、秋沢が陣取りしておいた席に運びよく観察した。見た目はパン粉を纏ったアメリカンドッグといった風で奇をてらったところは無い。しかし一たびこれを齧れば、中からチーズがビヨンと現れることだろう。
私と秋沢はお互いに顔を見合わせ、半ばドキドキしながら1口齧った。すると断面からトロトロのモッツァレラチーズが現れ、私の口と本体の間で5cm程までに伸びた。むふむふと喜びの声を上げながら秋沢を見やる。彼もまたチーズをビヨンビヨンと伸ばしていた。
それから私達はチーズをビヨンビヨンと伸ばしながらハットグを食べ続けた。サクサクで甘い衣とミルク感が強くクセが無いモッツァレラチーズ、ケチャップとマスタードの酸味が絡み合って美味しかった。ある程度食べ進めたところで鮮やかなピンク色の魚肉ソーセージが現れチーズが存在感を失ってしまったが、それすら愛おしく感じられた。
こうして初めてのチーズハットグは満足のうちに終わった。
2ヶ月後、我が地元にもチーズハットグを作る店が現れたので食べてみた。福岡で食べたチーズハットグよりも遥かにチーズが伸びた。店があるアーケード商店街の道幅くらい伸びた。
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