第126話
葬儀が全て終わり、明と白田は早々と帰宅していた。
初Hを終えてから、バタバタしていて恋人の甘い時間をとれなかった2人は・・・
126
愛野宅
明自室
「はぁ・・・・」
ソファに仰向けに寝っ転がりながら、面倒そうに喪服のネクタイを緩める明。
口から出たため息は、今日何度目なのだろうか・・・
それぐらい、ずっとため息をついていた気がする。
しかし今ついたため息は、今までの疲労からくるものではなく、安堵からきたもの。
昨夜のお通夜に引き続き、今日の葬式を済ませた。
倖田の屋敷から家に戻って来られ、やっとホッとできたのだ。
葬儀自体は問題なく進んだが、明がこれほど疲れている理由は・・・親戚達から向けられる好奇な視線と、プライベートに関する質問責めだ。
同性の恋人がいるのは明だけではないのに、皆は明と白田のカップルに興味を抱いた。
2人の馴れ初めや、将来の事まで根掘り葉掘り聞きたがる。
久美子の目が届かない時に襲来してくる親戚達に、タクヤやシズカが庇ってくれる時もあったが、とうとう我慢できずに明がブチギレる事となった。
それは火葬が終わった直後で、これからまだ精進落としの食事会があったが、その場に居たくないと白田と共にいち早く帰宅した。
「もう・・動きたくねぇ・・・」
そんな呟きが静かな部屋に響く。
やがて明の部屋の扉が開き、手に珈琲カップが乗っかったトレイを手にした白田が入ってきた。
「明、スーツ脱がないと皺になっちゃうよ」
「無理・・・動けない」
そう言いながら、手の先しか動かさない明。
白田は飲み物をローテーブルに置きながら、そんな明にクスリと笑う。
そしてソファに歩み寄り、明の頭上の空いている空間に腰を落とす。
「今日はお疲れ様」
そんな労いの言葉を言いながら、見下ろしてくる男の表情は優しく微笑んでいる。
そんな男の顔を見上げ「お前もな」と笑って返した。
本当に・・・感謝している。
散々家の騒動に巻き込んでも、最後まで嫌な顔をせずに付き合ってくれた。
それにこうやって、ものぐさな振る舞いの明に対しても自ら進んで世話をやいてくれる。
過去の自分も、今の自分の事も全て受け入れて、愛してくれる男。
「明・・・・キスしたいんだけど・・・」
見下ろしてくる男の瞳は、少し熱を持ち始めている。
ここ最近、毎日のように顔を合わせていても、恋人らしいく過ごす時間がなかった。
それがやっと2人きりになり、これからゆっくり出来る。
白田の顔をみれば、何を期待しているか自然とわかる。
明自身も男の熱い唇が落ちてくるのを、今か今かと待ちわびる。
だが・・・明はじっと男を見上げるが、一向に男が唇を落としてくることはない。
そこで、気がついた・・・・
男は自分から、明に触れられない事を・・・
「あ~~・・・忘れてた」
「へ?」
「接触禁止令、解くの」
「!?解いてくれるの!?」
「本当は、二日前にって思ってたけど・・・忘れてた」
「!?」
病院の帰りに言おうと思っていたが・・・初めてのファミレスを経験した祖母があまりにも衝撃的過ぎて、明の頭から抜け落ちていた。
「そんな・・・忘れる程、明にとってはどうでもいいのか・・・」
どんよりとした空気を身にまとってボソボソと呟く男に、明は内心でやべっと焦った。
そして、落ち込み他所を向いてしまった男に手をのばす。
「なぁ・・・」
男らしい頬のラインを確認するように、明の手の背がなぞる。
「知ってんだぜ」
いつもより低いトーンで話す明に、白田は誘われるように視線を合わせる。
「今日喪服のオレを見て、ムラっときただろ・・・」
妖艶な笑みを浮かべて、そう問いかける明。
それに対して図星だったようで、白田は「な・・そんなあからさまだった?」と慌てる。
正直白田がそうだったかなんて、明には解らない。
流石に葬儀の日に、内心ダダ漏れにするような男ではない。
だからといって、明も当てずっぽで言ったわけじゃない。
確信があった・・・
「いや全然わかんなかった。ただ・・・・・」
言葉を途中で止めて、男の頬を撫でていた手を下へと移動させる。
人差し指の背で顎、喉仏の線をたどり、そして男のネクタイを掴むとぐっと引き下ろした。
急激に接近する、お互いの顔。
そして明は、囁くように口にした。
「オレも、お前の喪服姿に欲情した・・・」
「あ・・き・・・」
明の予想できなかった言葉に、白田は目を見開き息を飲む。
「ほら、接触禁止令は解いてやったんだぞ・・・・」
明は白田のネクタイを解放し、そのまま自分の身体の上を滑らせる。
男は細く白い手の行く先を目で追う。
「脱がしたいんだろ?喪服・・・・」
そう言いながら見せつけるように、自分のジャケットのボタンを一つ外した。
******
白田は濡らしたタオルを数枚手に、洗面所を後にした。
「あ、白田君」
「!?」
そこへ丁度帰ってきた太郎と鉢合わせ。
玄関の扉を開けた直後の太郎と、二階へ戻ろうと廊下を歩いていた白田。
白田はオタオタしながら、タオルを持っていない手でハダケたシャツを手繰り寄せる。
思いっきり事情の後の自分の姿に、誤魔化せられるかと焦る。
「おっ・・おっかえりなさい、太郎さん」
「白田君もそんなに焦るんだね」
「え・・」
「大丈夫だよ。明君から19時以降に帰ってこいって釘刺されてたし」
・・・それはどういう・・・・
白田の背中に冷や汗が流れる。
「二人共いい大人なんだから、ははははは」
あっけらかんと笑う太郎に、全てお察しなんだと白田は苦笑いするしかなかった。
「明がUber頼むって言ってたから、僕はその間に汗を流すね。Uber初めてだから、楽しみだよ〜」
居た堪れない気持ちで突っ立っている白田。
その脇を太郎は、ニコニコしながら通り過ぎて行く。
その姿が仏間へ消えたのを確認して、白田は急ぎ足で階段を駆け上がる。
太郎に19時以降に帰宅するようにとは、つまり・・・Hするから帰ってくるなと言う意味だろうか。
喪に服す気もなく、父親に宣言するほどにやる気満々だった明。
それはそれで嬉しいのだが、父親の太郎に筒抜けだと思うと・・・・・何とも言えない気持ちになる。
「明・・・」
部屋の扉を開けた白田は、ソファの上に居る明に歩み寄る。
パンイチ姿でうつ伏せになっている明は、手元のスマホを触っている。
「親父帰ってきたんだろ?」
「・・・・うん」
明はスマホから顔をはなし、ソファの脇に立っている男を見上げる。
「何・・・その顔」
「いや・・・ちょっと恥ずかしくて」
「は?」
「思いっきり、太郎さんにバレてるのかと思うと・・・」
手に持っていたタオル毎、熱い顔を覆い隠す白田。
そんな男に、明は声を立てて笑う。
「はははははは」
「そんな笑わなくても・・・」
平然としている明に、もしかして恥ずかしがる自分はおかしいのかと錯覚に落ちそうになる。
へなへなとその場に崩れ落ちる白田に、明はソファの上で体制を変えて胡座座りになった。
そして白田へと向き合い、ニンマリ笑うと・・・
「オタクの息子さんのケツに、勃起チンコ突っ込んでますって?」
「明〜〜〜〜」
そんな・・・卑猥な事を平然と・・・
「何?まったくデリカシーなくて冷めた?」
「・・・・いや・・」
恨めしそうにソファの上の明を見上げると、白田は膝立ちになり明の身体をギュッと抱きしめる。
「興奮した」
さっきまであんなに味わったのに、また身体が熱を持ち始めてる。
綺麗な顔して、卑猥な言葉を口にする明がエロすぎて高揚する。
下に太郎が居るのに・・・・と思うのに、明の背中に回した男の手はそのまま下へと移動し彼の下着の中へと入り込んだ。
127へ続く
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